希米ラベル

「希米(きまま)」という名前が出来た経緯

2026年4月19日
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    希米になった経緯

    自社のお酒の名前を決めるのは、なかなか時間がかかりました。
    一度つけたら簡単には変えられないし、自社を代表するブランドとして長く育てていくものというのもあり、子どもの名前を考えるのと同じくらい悩みました。

    先ずは縁起のいい定番ネーミングから
    日本酒の銘柄といえば、「鶴」「亀」「松竹梅」「正宗」など、縁起の良い言葉を使ったものが多い。まずはそういった言葉を取り入れ、書家に筆文字を書いてもらってラベルに使う案を考えました。
    どうしても「ありふれた名前」になってしまうし個性も出ない、この方向性は駄目だなと早々に却下。

    易経の「地天泰」という言葉

    次に考えたのが、古代中国の経典「易経」。五経の筆頭に挙げられる儒教の基本書籍で、世の中の理を64卦(六十四卦)で表したもの。
    主に「周易」という占いの書としても知られています。
    その中で見つけたのが「地天泰(ちてんたい)」という卦。「安泰・泰平」を意味する大吉の卦であり、自社のブランド名としてもふさわしいと思いましたが、100%納得がいかない部分が残るということもあり
    この案は完全には捨てず、取り敢えず保留とした。

    「有頂天」コレだ!しかし商標が⋯

    もっとユニークな名前を探したくて、AIで熟語を大量に出力させたり、Web辞書を地道に調べたりしました。
    そこで出会ったのが「有頂天」という言葉。
    現代では「浮かれて調子に乗っている」というニュアンスで使われますが、もとは仏教用語で「最高の境地・天の頂点」を意味します。
    ふざけているようで深い意味がある、まさに理想の言葉でした。
    「コレだ!」と確信しましたが、商標を調べると、すでに別の酒類に使用されていることが判明。断念せざるを得ませんでした。

    古美術の記憶から生まれたヒント

    答えは、まったく別のところから降りてきました。
    以前、骨董品の取り扱いをしていた時期に学んだ知識の中に、陶芸家の川喜田半泥子(かわきた はんでいし)のことがありました。
    彼は作陶の際、窯に耳を当てて薪が燃える音を聞き続け、晩年には聴力を失ったと言われています。
    その半泥子が使っていた号に、「其飯(そのまま)」というのがあったのです。
    「おまんま=米」、そして日本酒は米を醸して造るもの。
    私は「そのまま」という響きと、米との繋がりに、強く心を惹かれたのでした。
    商標登録を調べると取得は可能なようでしたが、半泥子はすでに故人とはいえ家族もいる。
    あとになって、残された家族からクレームになる可能性を考えられる。
    ということもあり使用は断念することにしました。

    「きまま」という言葉が降りてきた

    やっぱり「まま」という言葉だけは使いたい。
    其飯の「飯」を「米」に置き換えて「其米(そのまま)」という案も浮かびましたが、何かしっくりこない。
    そこでふと降りてきたのが、「きまま」という言葉でした。
    「気まま」には、自由で縛られない、のびのびとした響きがあります。
    「まま」は迷わず「米」の字を充てることに決定。
    残る「き」の漢字は、地元農家さんが丹精込めて作った地元産米という希少性から、「希」の字を選びました。

    こうして「希米(きまま)」が生まれた
    希米(きまま)。
    希少な米から生まれる、気ままで自由な日本酒。
    醸造は酵母や麹などの菌の働きのお陰で出来上がりますが、まさに気儘なところがある。
    同じ材料を使ってもその時の気温やちょっとした精米具合などでも違うだけで同じような味にならない。

    まさに希米(きまま)

    名前には、地元の農家さんへの感謝と、お米本来の旨みをそのままお届けしたいという思いが込められています。
    名前には、これだけの物語があります。
    ぜひ一度、希米を手に取って、その背景とともに味わってみてください。

    醸造家プロフィール

    この記事を書いた人

    代表 / 醸造責任者 杉本 昭博

    旨い酒を作りたいという思いで、岸和田の地にて酒蔵を始めました。また、酒造りの傍ら、古美術商も営んでおり、ぐい呑みなどの酒器を集めています。