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「その他の醸造酒」という酒税法上の区分を、最近よく目にするようになったと感じている方も多いのではないでしょうか。
日本酒でもビールでもワインでもない、この少し聞き慣れないカテゴリーで新しい酒造りに挑む事業者が、いま全国で急速に増えています。
本記事では、2026年に入ってからの開業動向をもとに、その背景にある市場の変化を当社なりに考察します。

「その他の醸造酒」は、酒税法で定められた酒類区分のひとつです。
穀類や糖類などを原料に発酵させた酒類のうち、清酒・ビール・果実酒といった他の区分に当てはまらないものが、ここに分類されます。
米と米麹、水だけで造る清酒に対し、果物・ハーブ・ホップなどの副原料を加えて発酵させると、酒税法上は「清酒」と名乗れなくなり、この「その他の醸造酒」に区分されます。
近年話題の「クラフト醸造酒」は、まさにこの仕組みを活かして生まれた新ジャンルです。
背景には、清酒(日本酒)の製造免許が長年にわたり新規に発行されてこなかったという事情もあるでしょう。
戦後、新規参入は基本的に既存の酒蔵を買収・継承する形でしか実現できませんでした。
一方、「その他の醸造酒」の免許は最低製造数量のハードルも比較的低く、酒造りを志す新しい担い手にとって、現実的な選択肢になっています。
注目すべきは、その動きが加速していることです。
当社が把握している範囲でも、2026年に入ってからのわずか2か月で、当社を含め6件もの事業者が「その他の醸造酒」分野で開業・参入しています。
さらに興味深いのは、その顔ぶれです。
当社を除く事業者の多くが、新規の醸造家ではなく、もともと清酒を造ってきた既存の酒蔵だという点です。
クラフトサケといえば、これまでは異業種から参入する若い造り手のイメージが強くありました。
しかし足元では、長い歴史を持つ酒蔵自身が、この新しい区分に乗り出し始めているのです。
では、なぜ清酒の蔵元があえて「その他の醸造酒」へと舵を切るのでしょうか。
ひとつは、日本酒の市場そのものが長期的に縮小を続けてきたという現実があります。
限られた市場を多くの蔵が分け合う構図のなかで、従来の延長線上だけでは将来像を描きにくくなっています。
そしてもうひとつ、より積極的な理由として考えられるのが、「クラフト系市場の伸び」を酒蔵自身が敏感に察知しているのではないか、という見方です。
副原料を自由に使える「その他の醸造酒」は、地元の果物やハーブを取り入れた個性的な商品づくりが可能で、これまで日本酒を飲んでこなかった層にも届きやすいという強みがあります。
すでに醸造技術と設備を持つ酒蔵にとって、この区分はリスクを抑えながら新しい需要に応える、きわめて合理的なのもうなずけます。
ただ、日本酒の市場が縮小していく中、新しい試みとして、クラフトジンという流れがありました。
ジンはジュニパーベリーが入っていることが前提というある意味緩い規定なので事由なものづくりが可能ということもあり、焼酎を作っているような酒蔵だと設備もほぼ一緒なので参入しやすかったのでしょうが、最近はあまり聞きません。
市場が拡大する前に終わった感があります。

この構図は、クラフトビールがたどってきた道のりとよく似ているように感じます。
かつて小規模醸造所の挑戦から始まったクラフトビールは、市場の成長とともに、やがて大手メーカーも「クラフト」を冠した商品で参入する段階へと入りました。
新しいジャンルが一定の規模に育つと、既存の大きなプレイヤーがその波を捉えにくるこれは多くの市場で繰り返されてきたパターンです。
「その他の醸造酒」をめぐる現在の動きも、同じ曲線の途上にあるのかもしれません。
新興の造り手が切り拓いた市場に、技術と歴史を持つ既存の酒蔵が続く。
クラフトというムーブメントが、実験的な試みから、業界全体を巻き込む潮流へと移りつつあるサインだと、当社は受け止めています。
2026年初頭の開業ラッシュは、単なる一過性のブームではなく、酒造業界の構造そのものが動き始めた表れだとわたしは考えています。
当蔵もまた、その変化のただ中で生まれた一社です。
「その他の醸造酒」という区分は、自由な発想で酒造りに挑める“余白”そのものです。
私たちはこの新しいフィールドで、これまでの日本のお酒にはなかった味わいと体験をお届けしていきます。
今後の商品やリリース情報も、ぜひ当ブログやSNSでお楽しみください。
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この記事を書いた人
旨い酒を作りたいという思いで、岸和田の地にて酒蔵を始めました。また、酒造りの傍ら、古美術商も営んでおり、ぐい呑みなどの酒器を集めています。