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大阪商品計画に参加のための審査会があり、その時にサンプルとして提出するためのモノを醸造した経緯をまとめました。
大阪商品計画
大阪府内の中小企業の製造事業者、生産者自らが開発した商品の販路開拓までを支援する、大阪府連携のプロジェクト。
引用元:公益財団法人大阪産業局より
しかも、それがサンプル用なのに試験醸造を兼ねているという、なかなかチャレンジングなミッションでした。
通常であれば、まず試験醸造を重ねてレシピを固め、それから本番へというのが教科書的な手順です。
しかし今回はそんな余裕はなく、「初めての醸造=そのままサンプル品」という一発勝負。失敗が許されないプレッシャーのなか、仕込みはスタートしました。
醸造のベースとなるレシピは、師匠からいただいたものを「たたき台」として使用しました。
ただし、今回はいちごの果汁を混ぜ込むという独自の製法を採用したため、既存のレシピをそのまま使うわけにはいきません。
いちごの糖度・酸度・水分量が発酵バランスに影響するため、各工程の配合を慎重に見直しながら、自分なりのレシピへと落とし込んでいきました。
クラフトサケの醸造において、フルーツを使う場合に難しいのが発酵とのタイミング調整です。
果汁を早く入れすぎると発酵が乱れ、遅すぎると香りが飛んでしまう。
いちごのフレッシュな風味を最大限に活かすため、投入タイミングの見極めが今回のもっとも重要なポイントでした。

今回の仕込み量は15Lとコンパクト。
大きな醸造タンクではなく、ペール缶を使っての醸造となりました。
少量仕込みはスケールが小さい分、温度変化や雑菌の影響を受けやすいというリスクがあります。
「途中で雑菌が混入して台無しにならないか」「うっかりペール缶をひっくり返してしまわないか」心配事を挙げればキリがありません。
そこで今回は、24時間付きっきりで醸造を見守るという体制を取ることにしました。
醸造中はエアコンをフル稼働させ、室温を常に25度に設定。
発酵に最適な温度環境を維持し続けました。
その甲斐もあってか、わずか9日間で醸造が完了するという、理想的なスピードで仕上がりを迎えることができました。

今回採用した製法は、三段仕込み+追添(おいぞえ)という方法で行いました。
三段仕込みとは、蒸米・麹・水を一度に入れず、三段階に分けて仕込む伝統的な日本酒の製法。
この段階的な仕込みにより、酵母が安定して活性化し、雑菌が繁殖しにくい環境が整っていきます。
そして今回のポイントとなるいちご果汁の投入タイミングですが、「留添(とめぞえ)」の段階でアルコール度数が10度を超えたところで決断しました。
アルコール度数が一定以上に達していれば、果汁を加えても雑菌リスクが低く、かつ発酵の勢いをコントロールしやすい状態です。
いちごを投入した翌日、発酵の勢いが穏やかに落ち着いてきたことを確認。
最終分析を行うと、アルコール度数は約12度というベストな状態。
これはもう、袋吊りのタイミングだと判断し、丁寧に上槽作業へと移りました。

気になる仕上がりですが……自分で言うのも恐縮ですが、完璧なものが出来上がりました。
15Lの仕込みから得られた取れ高は約6L。
途中の分析用にサンプルとして約1Lを使用しているため、製品として残ったのは4合瓶で8本程度。
残りは経過観察・保存用として大切に保管しています。
袋吊りが終わったちょうどそのタイミングで、日頃からお世話になっているやまね酒造の社長にご来訪いただき、出来上がったお酒を見ていただきました。
「色、香り、味わい、酸味と甘味のバランスも最高で、しっかりと旨味もある完璧な状態」
社長からいただいた言葉は、「100点満点の出来」という最高の評価。
プロの醸造家からこれほどの言葉をいただけるとは、正直、予想以上の結果でした。
初めての醸造でここまで上手くいくと、むしろ「あとが怖い」という気持ちも正直なところ。
調子に乗ってはいけない、でも次への期待とプレッシャーが同時に押し寄せてきています。
今回仕込んだこのいちごのクラフト醸造酒は、大阪商品計画へのプレゼン用サンプルとして醸造したものです。
お酒そのものは、胸を張れる一本が出来上がりました。
あとは、このお酒の魅力をしっかりと言葉で伝え、審査を通過することを目指すのみです。
いちごの果汁を丁寧に組み込んだ三段仕込み。
9日間の温度管理と24時間の見守り。
師匠のレシピをベースに、自分の感性でアレンジした一本。
このクラフト醸造酒に込めた思いと技術を、これからも発信し続けていきます。
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この記事を書いた人
旨い酒を作りたいという思いで、岸和田の地にて酒蔵を始めました。また、酒造りの傍ら、古美術商も営んでおり、ぐい呑みなどの酒器を集めています。