日本酒を新たな発想で変えられるのか?

日本酒を新たな発想で変えられるのか?

2026年7月09日
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    経験がないから自由な発想ができる

    新たに酒蔵を始めるという方の殆どが、酒蔵で修行したという方が殆どですが、私はほとんど経験がありません。

    でも、いけるなと言う漠然とした自身のようなものがありした。

    なぜなら私は若い頃、何も教えてもらえない状況で人の仕事を見ながら試行錯誤しながら仕事を覚えるという育て方をされてきました。

    正直キツかったです、教えてもらってないのに失敗したら怒られるのですから。

    自分で考え試行錯誤するのが当たり前なので、現代風で言えば教えてもらってないのでできませんが通用しないのです。

    そうやって仕事をしてきたので、取り敢えず人間がやっている事なら大概のことは見れいれば理解できるようになりました。

    新たな発想で酒蔵を始める

    麹を造るための室と呼ばれる部屋がありますがウチには部屋というより室というスペースです。

    丁度製麹機と室の中間のようなスペースで、そこに色んなセンサーを付け、サーバーに1分ごとにデータを送るようにしています。

    さらに品温が低いうちはヒーターをONにし、品温が上がればOFFにするのはもちろん、室内の温度も加味して自動でヒーターをON/OFFするようにしています。

    これらの事を製麹機でなら自動で行うことも可能らしいが、1台400万円かかる。

    ウチの室は材料はホームセンターで揃えましたし、センサーなどはネットで仕入れました。

    総額も数万円で、あとは自分で組み立ててシステムはAIでプログラミングを書いてもらいました。

    なぜココまで安く出来るのか?、それは必要な部分が判ればあとは削っていくことが可能です。

    目的は麹が出来上がること、それには蒸し上がった米と種麹を振り、温度と湿度が規定以内で48時間程度あれば出来る。

    室という部屋には人間が入って麹をふりかけたり、手入れと言って混ぜ込む作業が必要ですが、作業に入るたび雑菌を持ち込むリスクが高くなります。

    雑菌が入れば麹が繁殖せず雑菌が繁殖する可能性もあります。

    汚染のリスクを減らせるように考えられたのが製麹機ですが、高価なので内のような零細酒蔵では導入できません。

    ならば、人間が入ること汚染のリスクが有るなら入らなければ良い。

    イメージしたのは研究室などで手だけ入れて検査するグローブボックスでした。

    コレなら人間が入らないので汚染のリスクも減らせる。

    ただ、この状態だと麹の出し入れができないのと温度管理も厳しいということでこういう形になった。

    高さは自分の作業がしやすい高さで、下部はヒーターを設置し全体を温めるようにした。

    作業台の部分は取り外し可能な板張りで前蓋を開けた所は透明ビニールのカーテンにすることで熱気が逃げにくいシステムになった。

    作業するときだけ蓋を開けるだけなので汚染のリスクも低い。もちろん全体断熱材で覆っているので熱も逃げない、内側はFRPでコーティングしているので水洗いも可能。

    右上に見えるのが各種センサーからのデータを集約しサーバーに送るためのシステムが入っている。

    考えられる事は全て盛り込んだ。

    にっこにこ太陽酒造の製麹システム

    酒蔵を始めたことで、色んな酒蔵の人とお話する機会があるがみんなビックリしている。

    SNSを見てくれている人はIoTで管理している人みたいにいわれたりする(笑)

    冷蔵庫内もセンサーで管理

    麹室はあらゆるセンサーが必要だったが、冷蔵庫内も色々と付けてみた。

    ウチは醸造用の冷蔵庫があるが、コレも自作した。

    外枠はホームセンターで仕入れた材料で作り、冷蔵システムだけは作れないので購入した。

    そこに、醸造用のタンクを設置し、タンク内にはTILTというセンサーを入れている。

    コレは、品温と比重を測るもので、データは同じくサーバーに送られるようになっている。

    TTILTセンサーレッド

    このセンサーがスグレモノで、液体の中で浮かんでる時の角度で比重を測ることが出来る。

    比重が重いときは糖度が高く低くなると糖がアルコールに変わったという認識ができる。

    残念ながら、アルコールを常時測定するセンサーが無かったのでコレで代用することにした。

    実際、日々の分析で、酸度や日本酒度、アルコール度数は測定するので目安にはなる。

    それより、品温の常時測定ができるのがありがたい。

    発酵が進むと熱を持つ、あまり高くなると冷やさないといけなくなるので、常時モニタリングできるのはありがたい。

    実際タンクにセンサーが内蔵されていて温度が高くなれば自動で冷やす仕組みもあるみたいだが、値段は軽く高級車が変えるレベルらしい。

    規模が大きくなればそういったシステムも検討しないといけないと思うが、今のところは手動で問題がないし、必要になればこのシステムに冷却システムを組み込めばいいだけなので大したことはないと思う。

    未だに人海戦術

    既存の酒蔵では老舗と呼ばれるようなところでも、人が作業しています。

    実際、設備も大きいので最新のAIを使ったような機材を導入となるとかなりの設備投資が必要ということもあり導入が進んでいません。

    なので、遅れていると言うよりできないというのが正しいのでしょう。

    逆に、ウチのような零細なら規模も小さいので色んな事が試せます。

    美味いと言われている日本酒に一言

    ここで話は変わるが、日本酒の製法について思う所があります。

    それは、美味いと言われるモノの多くが、大吟醸などの吟醸系だと思われます。精米歩合を米が残るギリギリの30%まで削ぎ落とした物を使い仕込むというものですが、実際のところ、50%以下まで削っても殆ど違いが判らないレベル違いしかありません、コストばっかり上がります。

    なぜ、30%まで削るのか?

    只のパフォーマンスと疑いたくなります、50%より30%のほうがより洗練されている気がしますし。

    決して吟醸が不味いと言っているのではなく、実際洗練された味わいになりますし、吟醸香という独特の香りもあります。

    コレは精米歩合ではなく麹が突きハゼという製法で作られていたり酵母の力も関係するので、一概に言えない気がします。

    また、精米歩合を高めることで洗練された味になりますが、その分味わいも薄くなっています。

    酒造適合米って美味しいの?

    稲架掛けした稲のある田圃の風景

    美味いからではなく酒を作りやすいように開発されたと思っています。

    飯米と言われる普段食べるお米は醸造した時に溶けにくく歩留まりがよくありませんが、酒造適合米は粒も大きく削ってもある程度大きさが残りますし、溶けやすいので歩留まりも良くなります。

    だから酒造適合米なんです。

    酒造りにはいいが美味しいかどうかは別なような気がしますね、それより食べて美味しいお米のほうが歩留まりなど気にしなければ美味しくなるのでは?

    経験がないからこのような発想になる

    しっかり酒蔵で経験を積めば古くから培われてきた常識的なモノが付いてきます。

    確かに昔から培われてきた方法などは大事だと思いますが、それだけでは駄目な気がします。

    歌舞伎に型破りという言葉があります

    コレは基本をしっかりと学び、体に叩き込んだ状態から崩すということで素晴らしいものになるのです。

    また、基本もできていないような人が勝手に崩してもそれは型破りではなく、「形無し」と呼ばれます。

    今の私も、基本ができている状態ではないので新しいことをしても形無しなのかもしれません。

    しかし、あの酒蔵は型破りだよねと言われるようになりたいと思います。

     

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    醸造家プロフィール

    この記事を書いた人

    代表 / 醸造責任者 杉本 昭博

    旨い酒を作りたいという思いで、岸和田の地にて酒蔵を始めました。また、酒造りの傍ら、古美術商も営んでおり、ぐい呑みなどの酒器を集めています。