どぶろくとにごり酒の違いとは?製法・味わい・酒税法まで酒蔵が徹底解説

どぶろくとにごり酒の違いとは?製法・味わい・酒税法まで酒蔵が徹底解説

2026年5月06日
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    はじめに|白く濁ったお酒、その正体は「どぶろく」?それとも「にごり酒」?

    茶碗に入ったにごり酒、若しくは滓酒

    冬になると恋しくなる、白く濁ったとろりとした濃厚な味で、冷でも熱燗でも美味しいお酒です。

    お正月や寒い夜の晩酌でいただく一杯は格別ですよね。

    同じように白濁しているこの2種類のお酒、「どぶろく」と「にごり酒」の違いをきちんと説明できますか?

    「見た目が似ているから同じもの」と思われがちですが、実は酒税法上の分類も製造方法もまったく異なる別のお酒なんです。

    当蔵では「その他の醸造酒」の免許のもと、伝統的などぶろく造りに励んでおります。

    本日はその知識と経験から、どぶろくとにごり酒の違いを酒蔵目線で詳しく解説いたします。


    どぶろくとにごり酒、決定的な違いは「こす」工程

    機械で圧搾してお酒を濾している工程

    両者を分ける最大のポイントは、「こす(濾す)」工程があるかないか

    これがすべてを決めると言っても過言ではありません。

    にごり酒は「こした」お酒

    にごり酒は、もろみを目の粗い布や網でこして、米粒や麹の粒をある程度残したまま瓶詰めしたお酒です。

    荒くこすため白く濁って見えますが、れっきとした「こす工程」を経ています。

    どぶろくは「こさない」お酒

    一方、どぶろくは発酵させたもろみをまったくこさず、お米の粒や麹がそのまま残った状態で完成させるお酒です。

    米粒のつぶつぶ感、麹の旨みが丸ごと味わえる、もっとも素朴で原始的な日本の酒の姿といえます。

    ちなみに、酒税法上「こす」とは、方法を問わず液状部分とかす部分を分離するすべての行為を指します。

    たとえば上澄みを別容器に移すだけでも「こした」とみなされるため、そういった行為があると清酒と見なされ酒税法違反になります。

    ですので、どぶろくは一切出来上がったものに火入以外の手を加えることが出来ません。


    酒税法上の分類はまったくの別カテゴリ

    「こす」工程の有無は、単なる製法の違いにとどまりません。

    酒税法上の分類が根本から変わってきます。

    にごり酒、滓酒(オリザケ)は「清酒(日本酒)」

    酒税法第3条第7号により、清酒とは「米、米こうじ、水を原料として発酵させて、こしたもの(アルコール分22度未満)」と定められています。

    にごり酒はもろみを荒くではあってもこしているため、堂々と「清酒」=「日本酒」として認められます。

    先ほども述べましたが上澄みだけ掬っただけで、濾したとみなされます。

    どぶろくは「その他の醸造酒」

    これに対してどぶろくは、こす工程を経ていないため清酒には該当せず、酒税法第3条第19号の「その他の醸造酒」に分類されます。

    「日本酒」と表示することはできません。

    つまり、製造に必要な免許も別物です。

    • にごり酒を造るには:清酒製造免許が必要
    • どぶろくを造るには:その他の醸造酒の製造免許が必要

    当蔵が保有しているのは「その他の醸造酒」の免許です。

    清酒は造れませんが、その分どぶろくに技術と情熱を注ぎ、米本来の風味を最大限に活かしたお酒造りに専念できることを誇りに思っております。


    製造工程を比べてみると、こんなに違う

    両者の造り方を時系列で並べてみましょう。

    にごり酒の製造工程

    1. 米を精米・洗米・浸漬する
    2. 蒸米を造る
    3. 麹造り(製麹)
    4. 酒母(もと)造り
    5. 三段仕込みでもろみを発酵させる
    6. 目の粗い網や布で荒くこす
    7. 火入れ・貯蔵・瓶詰め

    どぶろくの製造工程

    1. 米を精米・洗米・浸漬する
    2. 蒸米を造る
    3. 麹造り(製麹)
    4. 酒母(もと)造り
    5. もろみを発酵させる
    6. こさずにそのまま瓶詰め

    途中までほぼ同じ工程を辿るのに、最後の「こす」工程の有無で別の名前のお酒になる、これが日本酒文化の面白さでもあります。

    ちなみに、どぶろくも3段仕込みや火入の工程を踏むこともあります。


    味わい・風味の違い

    製法が違えば、当然味わいも変わります。

    にごり酒の味わい

    清酒の旨みをベースに、米粒由来の甘みやとろみが加わった味わい。

    すっきり感と濃厚さのバランスがよく、清酒に近いキレを残しつつにごりの楽しさが味わえます。

    どぶろくの味わい

    未発酵の米のデンプンや、糖化された天然の甘み、乳酸由来のさわやかな酸味、麹の香りが渾然一体となった、濃厚でとろりとした味わい。

    お米の粒感がそのまま舌に伝わる「飲むお米」とも呼べる素朴さが最大の魅力です。

    甘酒のようにほんのり甘く、ヨーグルトのような心地よい酸味があり、それでいてしっかりアルコールも感じる日本酒、甘酒、酒粕の「いいとこ取り」と表現されることもあります。

    粒感が残っているところから、食べるお酒とも呼ばれたりします。


    どぶろくは栄養価でも注目される発酵飲料

    近年、どぶろくは「飲む点滴」とも称される甘酒や、塩麹といった発酵食品ブームのなかで再注目されています。

    こす工程を経ないため、お米の栄養素や麹由来の成分がそのまま含まれているのがどぶろくの強み。

    ビタミンB群、必須アミノ酸、ペプチド、食物繊維、乳酸菌など、発酵によって生まれた多彩な成分を丸ごと取り入れることができます。

    日本古来のスーパー発酵飲料として、健康や美容に関心の高い方からも支持されているのです。


    どぶろく、にごり酒、おりがらみ、ややこしい仲間たち

    塗りの枡に並々とどぶろくが注がれたガラスのコップ

    ちなみに「おりがらみ」というお酒もあります。

    これはこした清酒のうち、発酵によって生じた澱(おり)をあえてからませて瓶詰めしたお酒で、にごり酒よりさらに澄んだ「うっすら濁り」が特徴です。

    整理すると、にごりの濃さはおおよそ次の順になります。

    おりがらみ < にごり酒 < どぶろく

    そして「こす工程の有無」で区分けすると、おりがらみとにごり酒は「清酒」、どぶろくだけが「その他の醸造酒」となります。


    当蔵がどぶろくにこだわる理由

    当蔵は「その他の醸造酒」の製造免許のもと、地元の米と水、丁寧な麹造りから生まれる本物のどぶろくをお届けしています。

    清酒のように澄ませることをあえて選ばないからこそ、お米の力をまるごと瓶に閉じ込められる。

    これがどぶろくならではの魅力です。

    弥生時代から飲み継がれてきた日本最古のお酒の姿、神事のお神酒として神様に捧げられてきた素朴で力強い一杯を、現代の食卓にお届けすること。それが私たちの使命です。


    まとめ|違いを知れば、もっとおいしく楽しめる

    最後に、どぶろくとにごり酒の違いをまとめておきましょう。

    • にごり酒:もろみを荒くこしたお酒。酒税法上は「清酒(日本酒)」。
    • どぶろく:もろみをこさないお酒。酒税法上は「その他の醸造酒」。
    • 見分けるポイント:「こす」工程の有無
    • 味わい:にごり酒はキレと濁りのバランス、どぶろくは濃厚で米粒感たっぷり
    • 製造免許:それぞれ別の免許が必要

    似ているようでまったく別物の2つのお酒。次にお店で「白いお酒」を見かけたら、ぜひラベルの裏側にも注目してみてください。「清酒」と書かれていればにごり酒、「その他の醸造酒」と書かれていればどぶろくです。

    当蔵のどぶろくは、お米の旨みと麹の力を余すことなく閉じ込めた一本。ぜひ一度、本物のどぶろくの世界をお楽しみください。

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    醸造家プロフィール

    この記事を書いた人

    代表 / 醸造責任者 杉本 昭博

    旨い酒を作りたいという思いで、岸和田の地にて酒蔵を始めました。また、酒造りの傍ら、古美術商も営んでおり、ぐい呑みなどの酒器を集めています。