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日本酒づくりは、長年にわたって杜氏(とうじ)の経験と勘によって支えられてきた伝統産業です。
当蔵ではその繊細な工程に IoT(モノのインターネット) を取り入れています。
当蔵でも、マイコン「ESP32」と各種センサーを組み合わせ、酒造りの状態を数値で「見える化」する取り組みを進めています。
この記事では、IoTを活用した次世代の酒造りが、どのように品質の安定と向上につながっているのかをご紹介します。
酒造りでは、麹(こうじ)づくりも醸造(もろみの発酵)も、温度や湿度のわずかな変化が仕上がりを大きく左右します。
これまでは、蔵人が一日に何度も蔵を巡回し、手の感触や経験をもとに状態を判断してきました。
この方法は熟練の技として尊いものですが、同時にいくつかの課題も抱えていました。
深夜や早朝の見回りによる負担、判断が職人個人の感覚に依存してしまうことです。
こうした課題を解決する手段として、当蔵ではIoTセンシングに注目しました。
当蔵では、低消費電力でWi-Fi通信が可能なマイコン ESP32 を中核に据えています。
ESP32に複数のセンサーを接続し、酒造りの各工程の環境をリアルタイムで計測する仕組みを構築しました。

電子工作ができるArduino(アルデュイーノ)というパソコンで、ラズベリー・パイという教育用の簡素なパソコンと同じようなものだと思っていただければ判りやすいかも。
CPUやメモリハードディスクが内蔵されていてWi-Fiも完備されているタイプのものもあり、機械等に組み込むための機能しかなく、Windows やLinaxのようなOSが動くような容量もパワーもなく、直接C++という言語を書き込むタイプです。
やすいものだと1000円台からあり、各種センサーを取り付けても数千円で収まるくらいです。
センサーからの信号は基盤の裏に一杯でている所に繋いで受け取ったものをWi-FiでGoogleDriveのSpreadsheetに送り、データ管理を行います。
もちろんセンサーからの信号を元にスイッチを繋げばON・OFFも可能ですので、当蔵の麹室では、品温を元にヒーターのスイッチを自動でON・OFF出来るような仕組みにしています。
醸造中のデータ管理も同じように管理していますが、品温と比重はTILTというセンサーを使って同じようにSpreadsheetで管理しています。
常時モニタリングすることで、ちょっとした変化も見逃さない仕組みができますし、タンクを開ける事で余計な雑菌が入るリスクも減らせます。
麹は日本酒の品質を決定づける、最も繊細な工程のひとつです。麹室(こうじむろ)では、ESP32につないだセンサーで次の4つの数値を常時測定しています。
これらを同時に把握することで、麹菌がいまどれだけ活発に働いているかを数値で読み取れるようになりました。
仕込みタンクで進む醸造の工程でも、ESP32を使って 室温・湿度・CO2濃度 を計測しています。
CO2は酵母によるアルコール発酵にともなって発生するため、その推移を追うことで発酵がどの段階にあるのかを正確につかむことができます。

醸造管理でとくに重要なのが、もろみの 比重 です。
比重は糖分がアルコールへ変化していく度合いを示し、発酵の進み具合を知る決め手になります。
当蔵ではタンクに浮かべるタイプの計測デバイス TILT(チルト) を活用しています。
TILTはもろみの中で 比重と品温 を自動で測定し、そのデータをESP32経由で取り込みます。
これにより、タンクからサンプルを採取しなくても、発酵の状態を継続的に追えるようになりました。
コレはアメリカのビール醸造家が一般的に使っているそうなのですが、日本ではあまり浸透していないみたいです。
日本でも購入は出来るのですが、アメリカから買ったほうが1万円くらい安かったので、取り寄せましたが2か月くらい掛かりました。

ESP32が集めた麹室・もろみ・TILTのデータは、すべて Wi-Fi経由でGoogleスプレッドシートに自動送信 されています。
クラウド上のスプレッドシートにデータが蓄積されることで、酒蔵にいなくてもスマートフォンやパソコンから状態を確認できます。
また、すべての工程のデータが一か所に集まるため、過去の仕込みと照らし合わせたりすることも容易になりました。
数値が蓄積されることで、酒造りはより確かなものへと変わります。
当蔵では、スプレッドシートに上がってくるデータを モニタリングしながら、つねに最適な状態を維持 するよう管理しています。
品温が上がりすぎていないか、CO2の発生ペースは想定どおりか?など、こうした変化を早い段階で察知し、対応できるようになりました。
そして、データが示す状態と職人の経験を重ね合わせ、 頃合いを見て出麹(でこうじ)や醸造を終える タイミングを判断します。
IoTは職人の感覚を置き換えるわけではありませんが、長年培われた経験を客観的なデータで裏づけ、確かなものにするための道具だと思っています。
私は酒蔵で働いたこともないし、醸造の経験もほぼありませんが、その分既存の常識として捉えられていた事を、一切無視して別の目線で酒造りを出来ると思っています。
IoTを取り入れた酒造りにしても、従来の杜氏さんの考えでは及びつかないと言うか、できたら便利だろうなぁウチには無理だけどの感覚ですが、ウチでは取りれました。
実際は数千円から数万円の設備と自分の努力で仕事が楽になるんですが経験が邪魔して見えなくなっています。
当蔵の麹室なんて老舗の酒蔵さんから見たらなんじゃこれ!というレベルのものだと思いますが、重要な部分さえ押さえておけば、同じものが出来上がります。
今までなら、有名メーカーが取り入れるようなシステムをウチのような零細酒蔵でも規模は違えど同じようなシステムを構築可能になりました。
それにIoTで品質の安定だけにとどまりません。
すべての工程がデータとして残ることで、「良い酒ができた理由」を次の仕込みに引き継いでいけます。
経験の継承が難しいとされる職人の世界において、これは大きな意味を持ちます。
伝統の技を大切に守りながら、新しい技術でさらに磨きをかける。
データと向き合いながら醸した一本を、ぜひ味わってみてください。
私たちの酒蔵は、これからも次世代の酒造りに挑戦し続けます。
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この記事を書いた人
旨い酒を作りたいという思いで、岸和田の地にて酒蔵を始めました。また、酒造りの傍ら、古美術商も営んでおり、ぐい呑みなどの酒器を集めています。