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「YouTubeで海外の人がどぶろくを自宅で造っている動画を見た。
自分でも造ってみたい」そう思って検索された方も多いのではないでしょうか。
結論から申し上げると、日本国内で個人がどぶろくを自家醸造することは、酒税法違反となる違法行為です。
たとえ自分で飲むだけであっても、ご家族にふるまうだけであっても駄目です。
なぜ違法なのか、その歴史的背景、罰則の内容、そして合法的にどぶろくを楽しむ方法まで、専門家の立場からわかりやすく解説いたします。

日本の酒税法では、アルコール分1度(容量パーセント濃度で1%)以上の飲料を「酒類」と定義しています。
じゃあ、醸造して1%以下に水で薄めたら良いのでは?と思うかもしれませんが、1%を超えた時点でNGなのでその後すぐに薄めたからOKにはならないと思います。
また、アルコールが1%を超えたのが故意に醸造したものなのか、放置していたジュースに天然酵母が入り込み知らないうちにアルコール発酵し1%を超えたものなのかにもよると思います。
判断は税務署が行いますので、これならOK という答えは出せません。
そもそも、酒類を製造する際には、製造場ごとに所轄税務署長から「酒類製造免許」を受ける必要があります。
つまり、米と米麹と水を発酵させて造るどぶろくは、アルコール度数が容易に5〜15%程度まで上がるため、まぎれもなく酒税法の規制対象となります。
免許を受けずに製造すれば、それだけで違法です。
「自分で飲むだけだから」「販売しないから」という理由は通用しません。
酒税法は「製造行為そのもの」を免許制にしているため、目的にかかわらず、無免許の製造はすべて違反となります。
気軽に考えてしまう方もいらっしゃいますが、罰則は決して軽くありません。
国税庁の公式見解によれば、酒類の製造免許を受けないで酒類を製造した者は、10年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられる可能性があります
これは単純無免許製造の場合の法定刑であり、悪質と判断されれば併科(懲役と罰金の両方)もあり得ます。
近年は税務当局によるネット監視も強化されており、SNSやフリマアプリでの自家製酒の販売・授与が摘発されるケースも増えています。
「バレないだろう」という発想は通用しない時代になっています。
例えば、お酒を売るのも免許が必要ですが、自身の所有するお酒を数回レベルでネットオークションなどで販売するのは処分と言う名目で見逃されているとのことです。
たまに調子に乗った人が、転売目的で仕入れたものを処分という名目で販売していることがあります。
そういう人は、少しの間見逃しているそうで、頃合いを見て育った頃に狩りに行くそう。(税務署酒税担当官談)
ちなみに、密告も多いそうです。
実際当蔵も免許を申請中にサイトを立ち上げていたのですが、その内容が酒造していると見られたみたいで忠告が来ました。
検索しても見つからないようなサイトでも当局はしっかりと見ています。

「江戸時代まで農村ではどぶろくを当たり前に造っていました。
日本で自家醸造が事実上禁止されたのは明治32年(1899年)で、それほど古い歴史ではありません。
なぜ禁止されたのか。最大の理由は国家財政の事情でした。
自家醸造が禁止された1899年当時、酒税は国税収入の約36%を占める国税中第一位の収入源でした。
日清戦争(1894年)の戦費と、その後の軍備拡張のため、政府は安定した税収を死守する必要があったのです。
地租(今の固定資産税)と並んで、酒税は明治期の国家財政を支える二本柱でした。
農村で自家用のどぶろくを造られると、商品酒が売れず、酒税が入りません。
そのため政府は、自家用酒の製造そのものを禁じる挙にでました。
時は過ぎ、第二次世界大戦後、この制度に正面から挑戦した人物がいました。
前田俊彦という人です。
前田氏は1981年にどぶろくを自家醸造し、その試飲会に国税庁長官を招待するという挑発的な行動に出ました(当然、来たのは長官ではなく警察官でした)。
その後、起訴され裁判で争われたのが、いわゆる「どぶろく裁判」です。
前田氏は「食文化としてのどぶろくを造る権利は、憲法が保障する幸福追求権に含まれる」と主張しましたが、1989年12月14日、最高裁判所は「製造理由の如何を問わず、自家生産の禁止は、税収確保の見地より行政の裁量内にある」として、酒税法を合憲とし、前田氏の有罪を確定させました。
現在、酒税が国税に占める割合は1〜2%程度にまで低下していますが、酒税法の自家醸造禁止規定は当時のまま存続しています。
これが法律上の現実です。
近年、英語圏のYouTubeでは「How to make sake at home」「Home brewing doburoku」といったタイトルで、自宅で日本酒やどぶろくを造る動画が多数公開されています。
これらの動画の多くは、自家醸造が合法な国(アメリカの一部州、ニュージーランド、オーストラリアなど)に住む方が発信しているものが多いです。
例えばアメリカでは、連邦法で家庭での醸造が一定量まで認められており、ワインやビールの自家醸造は広く行われています。
残念ながら、日本に住んでいる方が同じことをすれば、それは犯罪です。
動画の発信者に悪意はなくとも、視聴者である日本の方が真似をしてしまうと、酒税法違反となります。
「YouTubeで普通にやっていたから」は通用しません。
「では、免許を取得すればいいのでは?」と考える方もいらっしゃいますが、これも現実的ではありません。
酒類製造免許には、酒類の種類ごとに「最低製造数量基準」が定められています。どぶろくは「その他の醸造酒」に分類されることが多く、この場合年間6キロリットル(6,000リットル)以上の製造が免許取得の要件となります。
個人が趣味で年間6,000リットルのどぶろくを造ることは、設備面でも消費面でも非現実的です。
さらに、製造場の設備要件、申請者の経歴・財務状況の審査など、ハードルは極めて高く設定されています。
「自宅で趣味として」造ることは、制度上ほぼ不可能とお考えください。
なお、特区制度(どぶろく特区)を活用して、農家民宿などで提供する目的で製造する道はありますが、これも自治体の認定と税務署の免許が必要で、個人が自由に始められるものではありません。
この特区制度も決められた市区町村で営む農家であるということが条件だったりしますので、その地区に住んでいるからというだけでは駄目なのです。
大阪で言うと高槻市が特区に指定されていますが、この地区で米農家として営業していないといけません。

梅やその他の果実などをお酒に漬けて楽しむ自家製果実酒には、いくつか注意すべきポイントがあります。
自分や家族で飲む分には問題ありませんが、以下の行為は違法になります。
果実を漬けるお酒は、アルコール度数30度以上のものを使う必要があります。20度程度の低いお酒で漬けると、違法になる可能性があるので注意が必要。
度数の低いお酒だと、果実に含まれる糖分が発酵してアルコールに変わってしまうことがあります。たとえ1度でも度数が上がれば、それは「酒類の製造」とみなされ違法になってしまうのです。
20度程度のお酒では、まだ雑菌が繁殖する可能性がありますので、そうなれば発酵というより腐敗につながります。
30度程度あれば雑菌はほぼ繁殖する可能性はないので、安全においしく仕上げるためにも、度数の高いお酒を選びましょう。
オススメはホワイトリカーではなくスピリタス
良く梅の実が出る5月頃になると、梅の実と一緒にホワイトリカーも売られだします。
そんなホワイトリカーはそのまま使えて便利ですが、酒蔵としてはこういったお酒は工業的に造られていて、正直美味しいものでもないのでオススメしません。
かと言って森伊蔵などの高級焼酎なら良いのかと言いますと、コチラも度数が低めなのと、折角の風味が果実と合えば良いのですが、バッティングした場合残念な結果になります。
また、ロックなどでそのまま飲んで美味しい焼酎は単式(昔の乙類焼酎)と呼ばれ蒸留を1回しかせずに風味を残しています。
ホワイトリカーは複式(昔の甲類焼酎)と呼ばれ蒸留を複数回行いアルコール度数をあげています。その分風味は消えますので果実酒に向いているのですが、製法や原料をケチることで安く造られており、そのまま飲むのには厳しいお酒です。
そこでおすすめするのがスピリタスというウォッカです
スピリタスは96度程度のアルコール度数があり3倍に薄めたら丁度30度以上になります。極限までアルコール度数を上げているので限りなく不純物を除去されており、純アルコールに近いので雑味成分も除去されています。
ここまで読んでいただいた方には、「では、どぶろくをどう楽しめばいいのか」というと
答えはシンプルです。
正式な醸造免許を持つ蔵元が丁寧に造ったどぶろくを購入して味わうこと。
これが、法律を守りながら最高のどぶろくを楽しむ唯一にして最良の方法です。
当蔵では、「その他の醸造酒」の酒造免許のもと、米と麹と水だけで仕込む昔ながらの製法で、本格的などぶろくをお造りしております。
免許を持つ醸造所だからこそできる温度管理、衛生管理、原料選定により、自家醸造では絶対に到達できない品質の一杯をお届けしています。
ぜひ一度、プロの醸造家が手がける本物のどぶろくの味わいを、安心して、合法的に、お楽しみください。
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この記事を書いた人
旨い酒を作りたいという思いで、岸和田の地にて酒蔵を始めました。また、酒造りの傍ら、古美術商も営んでおり、ぐい呑みなどの酒器を集めています。