希米(きまま)なブログ

米麹

希米(きまま)なブログ

米麹とは何か?酒蔵が教える「発酵の神様」の科学と伝統

2026年4月22日
はじめに「米麹」は日本の食文化の根幹 日本酒、味噌、醤油、みりん、塩麹、甘酒など、これらはすべて「米麹(こめこうじ)」なくして生まれません。 発酵食品大国・日本の食文化を支える縁の下の力持ち、それが米麹です。 私たちは酒蔵として、毎年多くの米麹を仕込みます。 麹造りは、単なる製造工程ではなく麹菌という微生物との対話であり、古来から受け継がれてきた職人の技そのものです。 種麹が蒸されたお米の表面に着き、内部の水分をめがけて根を伸ばしながら表面に増殖していく過程で、いかに麹菌が快適に過ごせる環境を作ってあげるかを人間がサポートするのが製麹という作業といいます。 麹と糀の違い 何方もこうじ菌を表し、使われる用途に寄って使い分けられる事が多い。 ・糀は日本で生まれた和製漢字で蒸した米にこうじ菌が咲く様子が「花」のようであることから。特に「米こうじ」を指すことが多く、味噌や醤油を仕込む際のに使われる。 ・麹は中国から伝わった漢字で穀物全般のこうじを表す事が多く、主に酒造りに使われることが多い。 米麹とは?定義と基本知識 麹菌「Aspergillus oryzae」とは 米麹とは、蒸した米に麹菌(Aspergillus oryzae、アスペルギルス・オリゼー)を繁殖させたものをいいます。 麹菌はカビの一種ですが、人体に無害なだけでなく、食品の発酵・醸造において欠かせない有益菌として知られています。 また、日本固有の菌でもあり、2006年10月12日に日本醸造学会によって日本の「国菌」に認定されました。 学術的な観点からみると、Aspergillus oryzae のゲノムは2005年に解読され(産業技術総合研究所ほど)、約12,000ものタンパク質コード遺伝子を持つことがわかっています。 近縁種のコウジカビ(A. flavus)と比較しても、麹菌は有毒なアフラトキシンを生成する遺伝子がサイレンシング(不活性化)されており、安全性の高さが遺伝子レベルで確認されています(Machida et al., 2005, Nature)。 つまり、麹菌は「長い歴史の中で日本人が選び育ててきた、安全で優秀な微生物」で、日本以外の環境では自然に存在しません。 米麹が生み出す「酵素の力」酒蔵が最も重視する機能 酒蔵にとって、米麹の最大の価値は酵素の宝庫であることです。 麹菌は菌糸を伸ばしながら、多種多様な加水分解酵素を分泌します。 アミラーゼ=でんぷんを糖に変える。 アミラーゼはでんぷん(多糖類)をグルコース(ブドウ糖)やマルトース(麦芽糖)に分解する酵素で、日本酒の醸造において、この反応は「並行複発酵(へいこうふくはっこう)」と呼ばれる世界でも類を見ない発酵プロセスを可能にします。 ビールは麦のでんぷんを糖化してから発酵させる逐次発酵といいます。 ワインはもともと糖が豊富なブドウを発酵させます。 日本酒は、麹による米のでんぷんの糖化と酵母によるアルコール発酵が同時進行します。 この並行複発酵こそが、日本酒が20度近い高アルコール濃度に達しながら、複雑で繊細な風味を持つ理由の一つです。 プロテアーゼ=タンパク質をアミノ酸に変える プロテアーゼはタンパク質をアミノ酸に分解する酵素です。 日本酒の「旨み」の核心となるグルタミン酸などのアミノ酸は、このプロテアーゼの働きによって生み出されます。 酒蔵では「麹の力(こうじのちから)」という言葉をよく使いますが、これはまさにこれらの酵素活性の強さを指しています。 麹の力が強すぎれば酒が甘くなりすぎ、弱すぎれば発酵が進まない。麹師(こうじし)は数十年の経験と勘で、その絶妙なバランスを見極めます。 リパーゼ・セルラーゼなど 他にも麹菌は脂質を分解するリパーゼ、セルロースを分解するセルラーゼなど多種の酵素を産生します。 これらが複合的に作用することで、発酵食品の多様な風味と栄養価が生まれます。 麹造りの工程 酒蔵の職人仕事 製麹の工程 ① 原料米の選定と精米 良い麹は良い米から始まります。 山田錦や五百万石などの酒造好適米は、心白(しんぱく)と呼ばれるでんぷん質が豊富な中心部を持ち、麹菌が繁殖しやすい特性があります。 精米歩合によって麹の仕上がりも変わるため、この工程は非常に重要です。 ② 洗米・浸漬・蒸し 精米した米を洗い、適切な時間水に浸漬(しんせき)させた後、蒸し器(甑・こしき)で蒸し上げます。 蒸し米は外硬内軟(がいこうないなん)外側は硬く、内側は柔らかい状態が理想です。 これにより麹菌が内部に菌糸を伸ばしやすくなります。 ③ 種麹(たねこうじ)の散布 蒸し米を適温(約35〜40℃)に冷ました後、種麹(麹菌の胞子を担体に付着させたもの)を均一に振りかけます。 現在、種麹は「もやし屋」と呼ばれる専門業者が製造・販売しており、その歴史は室町時代にさかのぼります。 ④ 麹室での管理 職人の本領発揮 温度と湿度が厳密に管理された麹室(35〜40℃、湿度90%程度)で、約48時間かけて菌糸を繁殖させます。 この間、蔵人は数時間ごとに米を手でほぐす「手入れ(てをいれる)」を行い、温度の均一化と菌糸の伸長をコントロールします。 深夜2時、3時に起きて麹室に入ることも、これが酒造りの現実です。 良い麹を作るためには、文字通り「寝ずの番」が必要な場面もあり、蔵人の手はいつも温かく、米の甘い香りがしみついています。 麹菌の生育温度は菌糸伸長の最適温度が約30〜35℃、胞子形成の最適温度が約25〜30℃とされており、昔の杜氏はこれを経験則で把握しながら作業しましたが、当蔵ではIoTでデータを管理しながら最適なタイミングで手入れや室内の温度を管理しています。 米麹の健康・栄養機能 科学が証明する発酵の恵み 近年、米麹は健康食品としても注目されています。 ビタミン・必須アミノ酸の生成 麹菌の代謝によって、ビタミンB群(B1、B2、B6、ナイアシンなど)が生成されます。 また、プロテアーゼによって生成されるアミノ酸の中には、必須アミノ酸も含まれており、栄養的な価値も高まります。 機能性ペプチドの存在 麹由来の発酵食品には、血圧降下作用を持つACE阻害ペプチドが含まれることが報告されています(Itou & Akahane, 2004 ほか)。 塩麹や甘酒が健康食品として注目される背景には、こうした科学的根拠があります。 参照元:消費者庁 機能性表示食品の届出後における分析実施状況より 腸内環境への影響 麹発酵食品に含まれる麹菌由来の多糖類やペプチドは、腸内細菌叢(腸内フローラ)の改善に寄与する可能性が示唆されています。 近年の腸内マイクロバイオーム研究の進展とともに、発酵食品の機能性への注目度はさらに高まっています。 米麹の種類と用途 酒蔵目線で解説 麹菌の株(ひずみ)や培養条件によって、麹の性質は大きく変わります。 黄麹(きこうじ)日本酒・味噌・醤油の主役 最も広く使われる麹です。 クエン酸の生成量が少ないため、日本酒の醸造では酸度が低く、繊細でフルーティーな酒質になります。 白麹(しろこうじ)・黒麹(くろこうじ)焼酎の個性になる 沖縄・九州地方で焼酎醸造に使われてきた麹。 クエン酸を大量に生成するため、雑菌汚染を防ぐ効果があります。 黒麹(Aspergillus luchuensis)は泡盛の伝統的な麹で、白麹はその突然変異株として発見されました。 近年、白麹を日本酒醸造に応用する取り組みも増えており、従来の黄麹とは異なるシャープな酸味を持つ「白麹仕込み日本酒」が話題になっていたりもします。 酒蔵から見た「麹造りの未来」 伝統的な手作業による麹造りは、今後もその価値を失うことはないと思います。 しかし同時に、科学技術の進歩が麹研究に新たな可能性もあります。 麹菌のゲノム情報を活用した機能性向上の研究や、当蔵でも各種センサーで品温や湿度などを管理していますが、大手ではAI・センサー技術を活用した麹室の自動管理システムの開発など、伝統と革新の融合が進んでいます。 私たちが大切にしているのは、科学を知った上で、手を使うということです。 温度センサーやデータロガーが示す数値は信頼しますが、最終的には麹の香りを嗅ぎ、手で触れ、色を見て判断する。 それが酒蔵の杜氏の仕事なんです。 まとめ、米麹は「生きた文化財」 米麹は単なる発酵の道具ではありません。 日本の気候風土の中で何百年もかけて育まれ、職人の手から手へと受け継がれてきた「生きた文化財」だと思います。 麹菌 Aspergillus oryzae は日本の「国菌」であり、安全性と機能性がゲノムレベルで証明されています。 アミラーゼ・プロテアーゼをはじめとする豊富な酵素群が、発酵食品の味・香り・栄養を生み出し、並行複発酵という世界唯一の醸造技術を支えるのが米麹です。 麹造りは温度・湿度・時間の管理と、職人の五感が融合した精緻な技術であり健康機能性の面でも、科学的研究が急速に進んでいます。 酒蔵にとって、麹は「仕込みの始まり」であり「酒の命」です。 次に日本酒や味噌を手にするとき、その背後にある麹師たちの仕事と、目に見えない微生物の営みに、少し思いを馳せていただければ幸いです。
コップ酒

希米(きまま)なブログ

「清酒」と「その他の醸造酒」は何が違うのか? 酒造カテゴリーで理解する日本のお酒の区分

2026年4月21日
日本酒・どぶろく・濁り酒、似ているようで全く違うんですよね。 酒税法が定める2つのカテゴリーの違いを、製法・原料・出荷要件から丁寧に解説します。 1. 「清酒」と「その他の醸造酒」酒税法上の区分とは 日本では、お酒の製造・販売は酒税法によって厳格に規定されています、無免許での販売製造は法律違反になりますのでご注意ください。 同法は酒類を大きく「発泡性酒類」「醸造酒類」「蒸留酒類」「混成酒類」の4種に分類し、醸造酒類のなかにさらに「清酒」「合成清酒」「果実酒」「その他の醸造酒」などが並んでいます。 一般に「日本酒」と呼ばれるものの多くは酒税法上の「清酒」に該当します。 そのほか、いわゆる「どぶろく」や特定の発酵飲料は「その他の醸造酒」として区分されることがあります。 この2つのカテゴリーは、一見すると似たような製法をたどりながらも、酒税法が求める要件において根本的に違うんです。 その差異は「濾過義務」「添加物規制」「原料の範囲」という3つの軸に集約されます。 酒税法 第3条(抜粋・要旨) 清酒とは、米・米麹・水を原料として発酵させ、濾過したものであって、アルコール分が22度未満のものをいう(糖類・有機酸等の添加は一定条件下で可)。 参照元:国税庁 法令解釈 第3条 その他の用語の定義より ここで注目すべきは「濾過した」という一文です。 清酒として出荷するためには、醪(もろみ)を必ず濾過しなければならない。 これが「その他の醸造酒」との出発点となる違いです。 2. 最大の違い ①:醪(もろみ)を濾す義務があるかどうか 清酒製造において、米・米麹・水を仕込んで発酵させた段階のものを醪(もろみ)といいます。 この醪をそのままの状態が「どぶろく(濁醪)」です。 ちなみに、その他の醸造酒ではもろみの状態のものを濾すことが出来ないのですが、時間が経って上澄みと沈殿物に分かれた状態で、上澄みだけをすくい取るだけでも濾したとみなされます。 清酒 濾過が必須条件 酒税法上、醪を濾過しなければ「清酒」として製造・出荷できない。濾過によって米の固形分(酒粕)と液体(清酒)に分けることが法定要件。どぶろく状態での出荷は清酒の免許では不可。 その他の醸造酒 濾過しないまま出荷可能 「その他の醸造酒」の免許であれば、醪を濾過せずにどぶろく・濁り状態のまま製品として出荷できる。近年の「どぶろく特区」制度もこのカテゴリーを活用している。 この規定が実務に与える影響は大きく、たとえば農家民宿や地域の小規模事業者が「どぶろく特区」制度を活用してお酒を製造・販売する場合、多くは「その他の醸造酒」の製造免許を取得しています。 清酒の免許では、醪を濾過して清澄な状態にしなければ出荷できないというのもありますが、決定的なのは清酒、焼酎、味醂を製造する酒造免許は新規で受け付けていないためというのもあります。 また、この違いは製品の外観にも直結します。 濾過を経た清酒は基本的に透明〜淡黄色の液体になりますが、その他の醸造酒のどぶろくは白濁した状態のまま販売されます。 近年人気の「にごり酒」は清酒カテゴリーに属しますが、これは一度濾過したあとに意図的に少量の澱(おり)を戻すか、粗めの濾過布を使って固形分を微量残す形をとっており、「濾過した」という要件を満たしています。 3. 最大の違い ②:発酵途中の添加物に関する規制 清酒とその他の醸造酒を分けるもう一つの重要な軸が、発酵途中に投入できる原料・添加物の範囲です。 清酒 仕込み中の添加物は厳しく制限 発酵中(仕込み工程)に添加できるのは酒税法が列挙した品目に限られる。米・米麹・水を基本とし、清酒かす・醸造アルコール・糖類・有機酸・アミノ酸等は一定条件下でのみ可。農産物など「列挙外」の素材を発酵途中に入れることは原則不可。 その他の醸造酒 発酵途中の添加に比較的自由度 その他の醸造酒は「米・麹・水以外」の素材——たとえば果物・野菜・ハーブ・乳製品など——を発酵途中に加えた製品を製造できる。これにより日本酒ベースでありながら独自風味を持つクラフト系発酵飲料が生まれやすい。 清酒では、仕込みに使用できる原料を酒税法が正面から規定しているため、たとえばゆずや梅を発酵中のもろみに直接投入して一緒に発酵させることは「清酒」の製造免許の枠内では認められません(完成した清酒にあとから果汁を加えた場合、カテゴリーがリキュールになり別の免許区分が必要になります)。 一方、その他の醸造酒のカテゴリーでは、こうした「変わり種の素材」を発酵プロセスに組み込むことが可能なケースがあり、近年のクラフト系発酵飲料ブームで注目されています。 たとえば米と麹を基本にしながら、発酵途中で果物を加えたフルーツどぶろくなどがその例です。 4. 最大の違い ③:使用できる原料の範囲 清酒は原則として「米・米麹・水」が主原料です。 酒税法に定める清酒の定義には「米、米麹及び水を原料として発酵させ、濾過したもの」という文言があり、これが清酒たる最低条件を規定しています。アルコールや糖類の添加は法定要件を満たせば認められますが、あくまで「清酒」という枠内に収まる形に限られます。 ポイント:清酒の原料規定(概要) 清酒の原料として認められる主なもの:米・米麹・水・清酒かす・醸造アルコール(アルコール分36度未満)・糖類・有機酸・アミノ酸塩・水あめ・着色料など、酒税法施行令が定める品目に限定される。 参照元:「清酒の製法品質表示基準」の概要より これに対して「その他の醸造酒」は、その名のとおり清酒・合成清酒・果実酒・ビール等の各定義に当てはまらない醸造酒を広く受け止めるカテゴリーです。 使えるのは穀物と糖類を主原料とし、副原料にそれ以外のモノを使うことを許されていてハーブやホップを使った製品などもあります。 5. 具体的な事例で比較する 事例①:どぶろく特区と農家の直売所 2003年に始まった「構造改革特区」制度により、特定の地域では農家や農家民宿などが小規模にどぶろくを製造・販売できるようになりました。 このどぶろくは「その他の醸造酒」として製造免許を取得したもので、特区という関係上どぶろくしか造れないという規制もありますが。 地域おこしや農泊促進のなかで広がっており、現在全国に特区が存在し、大阪では高槻市にあります。 事例②:にごり酒は清酒か、その他の醸造酒か 市販されている「にごり酒」の多くは清酒に分類されます。 これは「荒濾し(あらこし)」と呼ばれる粗めの布で醪を一度通すことで、法律上「濾過した」という要件を満たしているためです。 見た目は白濁していますが、酒税法上は濾過済みの清酒です。 一方、濾過を一切行わないどぶろくはその他の醸造酒になります。 事例③:米と果物を一緒に発酵させたクラフトサケ 近年、米と麹を基本にしながらも発酵途中でハーブや果物を加えたクラフト系発酵飲料が登場しています。 これらは清酒の原料規定の範囲外の素材を発酵プロセスに用いているため、「その他の醸造酒」として製造されることが多く、ラベルにも「その他の醸造酒」と記載されます。 事例④:純米酒と本醸造酒 「純米酒」は米・米麹・水のみで造られる清酒であり、醸造アルコールの添加を行いません。 「本醸造酒」は醸造アルコールを少量添加した清酒で、どちらも酒税法上は「清酒」です。 いずれも醪を濾過する工程を経ており、どぶろくとは異なる完全別カテゴリーでどぶろくを純米酒と呼ぶこともできません。 当蔵では純米造りとよんでいます。 6. 一覧表:清酒 vs その他の醸造酒 比較項目 清酒 その他の醸造酒(どぶろく等) 醪の濾過 必須(法定要件) 不要。濾さずに出荷可能 主原料 米・米麹・水が基本 米・麹・水以外の素材も使用可 発酵途中の添加 法定品目のみ(厳格な列挙) 比較的自由度が高い 外観 透明〜淡黄色(にごり酒は例外的に白濁) 白濁・不透明が多い 代表例 純米酒・吟醸酒・本醸造酒・にごり酒 どぶろく・クラフト発酵飲料 酒税法上の根拠 第3条第7号(清酒の定義) 第3条第19号(その他の醸造酒の定義) 免許区分 清酒製造業免許 その他の醸造酒製造業免許 7. まとめ:2つのカテゴリーが示す意味 「清酒」と「その他の醸造酒」は、いずれも米と麹と水を使った発酵飲料という共通点を持ちながら、酒税法が定める要件においてはっきりと異なります。 清酒は「濾過すること」「原料は法定品目に限ること」という2本の縛りを持ち、それが伝統的な清酒品質を守る制度的な裏付けとなっています。 一方、その他の醸造酒はその縛りから解放されたカテゴリーであり、どぶろく特区の農家や新しいクラフト発酵飲料をつくるメーカーにとってはより柔軟な製造免許の選択肢になっています。 清酒は醪を必ず濾過しなければならず、どぶろくのまま出荷は不可 その他の醸造酒は醪を濾さずそのまま出荷でき、どぶろく特区はこの免許を活用 清酒の仕込みに使える原料・添加物は酒税法の列挙に限定される その他の醸造酒は発酵途中に米・麹・水以外の素材を加える自由度がある 市販の「にごり酒」は荒濾しを経た清酒であり、どぶろくとは法律上の別物 純米酒・本醸造酒・吟醸酒はいずれも「清酒」に分類される 日本酒を選ぶとき、ラベルに「清酒」と書いてあるか「その他の醸造酒」と書いてあるかを確認するだけで、その製品がどのような制度的枠組みのなかで造られたのかが見えてきます。 お酒の背景にある法律の仕組みを知ることは、日本酒をより深く楽しむ入口になるかもしれませんね。
工程

希米(きまま)なブログ

日本酒発酵の科学:麹・酵母・乳酸菌が織りなす精密な醸造プロセス

2026年4月20日
日本酒って単純な「お酒」ではないんですよ。 まず、白米というデンプン質の基質から出発し、複数の微生物が役割を分担しながら段階的に変換を行う世界でも類を見ない複合発酵飲料なんです。 その発酵プロセスを、微生物学・生化学の視点から紐解いてみたいと思います。 1. 製麹工程:酵素産生のプラットフォームの構築 日本酒造りの第一の鍵は麹菌(Aspergillus oryzae)による製麹工程にあります。 外硬内軟(外側が固くて中側が柔らかい状態)の蒸米に麹菌の胞子を散布するところから始まり、種麹が散布された蒸米は温度・湿度を精密に管理した麹室(こうじむろ)で約48時間程度培養していきます。この間、麹菌は菌糸を米粒内部へと伸長させながら、多種多様な加水分解酵素を分泌しています。 特に重要なのがアミラーゼ(α-アミラーゼおよびグルコアミラーゼ)とプロテアーゼの産生です。α-アミラーゼはデンプンの α-1,4-グリコシド結合をエンド型に加水分解してデキストリンを生成し、グルコアミラーゼはその末端からグルコースを逐次的に遊離させる。この二段階の糖化反応により、酵母が資化可能な単糖が供給される。プロテアーゼはタンパク質をアミノ酸・ペプチドへと分解し、後工程における酵母の窒素源として機能するとともに、酒の旨味成分の前駆体にもなる。 専門用語を並べていますが、要するに、麹菌がデンプンの塊である米を分解して糖分に変化させて、次の工程の酵母が二酸化炭素とアルコールに分解しやすいようにしてくれいているということです。 2. 酒母(しゅぼ):微生物叢の精選と酵母の増殖 次に、製麹で得られた麹と蒸米・水・酵母を小さなタンクに仕込み、「酒母」(もと)と呼ばれる高密度酵母培養液を育成していきます。 伝統的な生酛(きもと)・山廃酛(やまはいもと)では野生の乳酸菌(Lactobacillus 属等)を自然に増殖させますが、現代の酒造りでは殆ど行われていません。その代わり、現代主流の速醸酛(そくじょうもと)では、生酛や山廃元のように乳酸菌を増殖させるのではなく醸造用乳酸を直接添加しています。 乳酸菌によるホモ乳酸発酵(C₆H₁₂O₆ → 2CH₃CH(OH)COOH)は醪(もろみ)のpHを急速に低下させる。このpH低下は選択圧として機能し、酸性条件に弱い雑菌を排除しながら、耐酸性を持つ醸造酵母(Saccharomyces cerevisiae)の増殖を優位に立たせる。この段階で酵母は対数増殖期に入り、後工程のもろみ発酵に備えて細胞密度を高めていく。 醪が酸性化することで、醸造に悪影響を与える雑菌が入っても酸性度が高い状態では行きていくことが出来ず死滅してしまうのを目的としています。 そんな中、酵母は酸性に強いため他の雑菌とともに死滅することはなく仕事ができているのです。 3. もろみ発酵:並行複発酵という世界的にも稀な発酵様式 日本酒最大の特徴が、この並行複発酵(concurrent saccharification and fermentation)にあります。 ビールのように糖化・発酵を分離せず、麹による糖化と酵母によるアルコール発酵が同一タンク内で同時進行する。 これは世界中の醸造飲料の中でも極めて稀な発酵様式なんですよね。 麹米・掛米・水を「初添・仲添・留添」の三段階(三段仕込み)に分けて段階的に投入するのは、酵母菌体密度に対する基質濃度を適正範囲に保ち、オスモティックストレスによる酵母活性の低下を防ぐためででもあるんです。 また、この操作は低温・長時間発酵(約20〜30日)と組み合わせることで、香気成分(酢酸イソアミル・カプロン酸エチル等)の生成を促進し、複雑な風味プロファイルを形成します。 アルコール発酵の中心反応は解糖系(エムデン-マイヤーホフ-パルナス経路)を経たエタノール生成の:C₆H₁₂O₆ → 2C₂H₅OH + 2CO₂。。 発酵末期のアルコール濃度は14〜20%に達し、これは酵母自身によるアルコール耐性の上限に近い値なんですよね。 結局最後は、酵母の力で二酸化炭素とアルコールに発酵という形で変化しましたが、そのアルコール濃度が高くなるに連れ酵母も死滅していくんです。 4. 上槽と火入れ:発酵の終止と品質の安定化 もろみが熟成すると「上槽」(じょうそう)と呼ばれる固液分離工程を経て清酒と酒粕に分けられ、透明なお酒になります。 その後、多くの場合火入れ(低温殺菌)を行います。 幾ら酒粕と分離しても、まだ生きている酵母はいるので、60〜65℃での短時間加熱処理を行い、残存する野生酵母・乳酸菌の失活と、酵素活性(特に残存アミラーゼ)の不活化させます。 こういったパスツーリゼーション(低温殺菌法)の概念が日本で独自発展した技術として、西洋のパスツール(ブドウからワインが造られる原理を解明した人の名前から)よりも約300年先行するとされています。 日本酒の発酵は、微生物学・酵素化学・食品工学が交錯する精緻な生物学的プロセス。 麹菌、乳酸菌、酵母それぞれが異なる時空間的ニッチを占めながら連携することで、あの透き通った一杯が生まれるんですよね。 世界中で飲まれるお酒ですが、清酒の製法は日本独自のものというお話でした。
希米ラベル

希米(きまま)なブログ

「希米(きまま)」という名前が出来た経緯

2026年4月19日
ブランド「希米(きまま)」はどうして生まれたのか。縁起物の定番ワード、易経の「地天泰」、仏教用語の「有頂天」、そして陶芸家・川喜田半泥子の号「其飯」多くの候補を経てたどり着いた、地元農家の希少米への感謝と「そのまま」の美味しさを届けたい想いが込められたブランド名の誕生秘話をご覧ください。
袋吊り

希米(きまま)なブログ

本格的に酒造を始める

2026年4月14日
酒造りを始める準備ができた 免許があればすぐに酒造りが出来ると思っていたが、意外と免許後の準備が大変。 酒造というのは米を蒸して麹と水と混ぜて酵母を入れるだけで出来上がるが、それ以外の作業というか仕事が膨大にある。   免許が来たあとにしかできない事 レシピを税務署に申告する。 ラベルデザインの申請 施設の什器を登録する 醸造中の分析をする薬剤の発注 酵母の発注 etc ウチみたいな新規の酒蔵だと、許可されたレシピがゼロなので全て申請していかないといけないし、免許がないと買えない酵母のようなものもある。 そんなものの準備をしていたら2か月も経ってしまった。 Windowsしか使えない 酒造や酒販に関する申請や申告にはe-Taxというネットでの登録が必須で、紙での申告は嫌がられる。 紙での申請だと、申請書を郵送で専用の窓口に送ってそこでPDF化されお酒の担当のところに届けられる仕組みなので、1週間位かかるらしいが、e-Taxだと申請したらすぐにみられるのでお酒の担当官からe-Taxを勧めれれた、と言うかお願いされた。 では、e-Taxとやらを使ってみるかと調べていくと、ネットのものもあるが、お酒の事を申請するにはソフトをインストールするものしかできないことが判る。 しかも、マイナンバーカードを使ってカードリーダーで読み込ませて本人確認する仕組みだが、マイナンバーも持っていないのでどうしようかと考えたら、会社の登記情報が載った書類を準備すれば対応可能とのこと。 ただ、27か月で8000円くらいの費用もかかる。 マイナンバーカードを作っても時間がかかるしその間何も出来ないので、諦めて費用を払って会社の情報が掲載された書類を申請した。 コレで申請できると思うが、もう一つ落とし穴が・・・私のパソコンはMACなのでその時点でアウト。 しょうがないので嫁さんが使っているパソコンを借りてe-Taxをインストールしてアカウントを作り、最低限の申請だけ済ませた。 酒造は申請だけでなく、販売実績などを毎月申告しないといけない。 そのたびに嫁さんにパソコンを借りるのも厳しいので諦めて中古のウインドウズのノートでも買おうかと見たが、5年くらい前のモノが数万円で売られている。 取り敢えずWIN11はインストールされているみたいだが、まともの動くのか?すぐに壊れるのではという不安もある。 かと言って新品は10万円以上するしスペックの低いものは動きが遅すぎて使い物にならない。 MINI‐PCというのを見つけた デスクトップ型のパソコンでモニターもキーボードもマウスも無いものだが、コレをMACから遠隔操作で使うことが出来れば、モニターもキーボードもマウス不要でMACから操作できるという代物、私の使い勝手にぴったりマッチしている。 しかもお値段3万円程度と格安。スペックも申し分なくするルルと動く。 普段はMACで、e-Taxを使いたいときだけコノMINI‐PCを起動し申請を行う。 設定時のみモニターやキーボードが必要だが、モニターはテレビを使い、その他はMACに変える前に使っていたキーボードなどを使って行った。 コレでやっと醸造家としてのスタートが切れる 2か月という期間はあっという間だった。 免許が取れたことに浮かれていたのと、やることが一杯過ぎて中途半端であったりうっかり見落としていたこともあり、時間が経過してしまった。 何はともあれ、杉本酒造りスタートします。  
居酒屋でビールで乾杯

希米(きまま)なブログ

どぶろくと合う料理と青魚の驚きのペアリング例10選

2026年3月23日
食通たちの間でささやかれている究極の組み合わせが「どぶろく×青魚(あおざかな)」です。鯖(さば)や鰯(いわし)、秋刀魚(さんま)といった脂ののった魚と、濁り酒であるどぶろく。一見意外に思えるこの組み合わせには、実は科学的・文化的な裏付けがあります。