新米醸造家の希米なブログ

失敗は許されない仕込み。初めての醸造で「いちごを使ったクラフト醸造酒」に挑んだ9日間の記録

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失敗は許されない仕込み。初めての醸造で「いちごを使ったクラフト醸造酒」に挑んだ9日間の記録

2026年4月29日
初めてのクラフト醸造酒で、いちご果汁を使った三段仕込み+追添製法に挑戦。15Lの少量仕込み・9日間の温度管理・袋吊りまでの全工程と、やまね酒造の社長から「100点満点」と評されるまでの醸造記録を詳しくお届けします。
チーズ

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腐敗と発酵は紙一重 微生物が生み出す「有益」と「有害」の境界線

2026年4月26日
腐敗と発酵、その違いはたった一つ 「腐る」と「発酵する」この二つは、実は科学的にまったく同じ現象なんです。 どちらも微生物が食べ物に付着し、その成分を分解・変化させる働きをいいます。では何が違うのか。 答えはシンプルで、人間にとって有益かどうか、ただそれだけなんですよね。 私は、賞味期限が切れたような納豆やチーズをどうせ腐らせて作ったものだからといって食べてお腹を壊していました。 いくら有益な菌だと言っても、その後有益でない菌が付着し発酵ではなく腐敗に変わっていることあるので、賞味期限切れは程々にしたいと思います。 そんな、納豆やチーズ、味噌や醤油といった発酵食品は、特定の菌の働きによってうま味や栄養価が高まり、私たちの体に嬉しい食べ物へと変化します。 一方で冷蔵庫の奥で忘れていた食材が「腐った」ときというのも、同じように野生の菌が活発に働いています。 ただし、その結果が人間にとって有害であるために「腐敗」と呼ばれているんです。言い換えれば、発酵食品とは人類が長い年月をかけて「有益な腐敗」を選び抜いてきた知恵の結晶とも言えますね。 日本酒・パン・チーズなど、発酵食品に共通するメカニズム 発酵の仕組みを知ると、身近な食べ物への見方が変わります。 日本酒を造る際には「醸す(かもす)」という言葉が使われます。まず麹菌が米のデンプン(炭水化物)を糖へと分解し、次にその糖を栄養源として酵母菌がアルコール発酵を行います。 この二段階のプロセスが、あの豊かな香りと味わいを生み出しているんですよね。パンも同様です。 小麦粉に含まれる糖分をイースト菌(酵母)が食べ、その際に発生する二酸化炭素ガスが生地を膨らませます。 一度成形した生地が再び膨らむ「二次発酵」も、同じ酵母の働きによるものです。焼き上がったパンのふんわりとした食感は、目に見えない微生物たちの活動の賜物と言えるでしょう。 チーズや納豆も乳酸菌や納豆菌という特定の微生物が原料を変化させたもの。どれも根本にあるのは「菌が有機物を分解する」という同じ原理です。 先人たちの「命がけの試食」が今の食文化を作った その象徴的なエピソードが、納豆の起源です。 極度の空腹状態に置かれた人が、炎天下で変質してしまった豆を口にしたところ、意外にも美味しかった。これが納豆誕生の始まりとも伝えられています。通常であれば手を出さないような状況だからこそ、偶然の発見が生まれたわけです。 世界最古のお酒「ミード」が生まれた奇跡の瞬間 発酵の歴史を語るうえで欠かせないのが、ミード(蜂蜜酒)です。ワインやビールよりもさらに古く、約8,000年〜1万年前に遡ると言われる、世界最古のお酒として知られています。 その起源については、こんな説が伝えられています。野生のミツバチの巣が水たまりに落ち、そこに天然の酵母が付着して自然発酵が進んだ。偶然その場を通りかかった人物が漂ってくる芳しい香りに気づき、近づいてみると蜜が溶け込んだ液体がある。 ふつう何が入っているかわからないような、水たまりの液体を怖くて飲めませんよね。動物のおしっこかもしれないし・・・。 しかしその人は、激しい喉の渇きで死を覚悟するほどの状況にあったみたいで。「どうせ死ぬなら」と飲んでみたところ、驚くほど美味しく、さらに心地よい酔いの感覚を初めて経験をしました。 これがミード、ひいては人類とお酒の出会いの始まりとも言われています。 納豆の発見譚と重なるこのエピソードが示すように、人類の食文化における偉大な発見の多くは、極限状態での偶然から生まれてきたのかもしれません。 ハネムーンの語源はミードにあった ミードにまつわる話で、もう一つ興味深いエピソードがあります。それが「ハネムーン(honeymoon)」の語源です。 古代ヨーロッパでは、結婚したカップルが自ら蜂蜜を集めてミードを仕込み、完成したお酒を家族や友人・知人に振る舞う風習がありました。 ミードが飲み頃になるまでにはおよそ一ヶ月かかることから、結婚後の一ヶ月間は「蜂蜜(honey)の月(moon)」すなわちハニームーンと呼ばれるようになったと言われています。 蜂蜜には古くから「豊穣・繁栄・愛」の象徴としての意味が込められており、新婚夫婦がミードを飲むことで夫婦円満や子宝に恵まれるという願いも込められていたようです。 二人で丹精込めて仕込んだお酒を、大切な人たちと分かち合うそんな温かな文化が、現代の「新婚旅行」を指す言葉として世界中に残っているというのも感慨深いです。 蔵付き酵母から協会酵母へ。日本酒醸造の技術革新 日本酒の醸造においても、発酵の主役である酵母をめぐる歴史があります。 昔の酒蔵では、外部から酵母を調達するのではなく、その蔵が建つ土地や建物に自然に棲みついた「蔵付き酵母」を活用していました。そもそも売っていませんでしたし(笑) 各地の気候・風土・建物の構造が生み出す固有の酵母菌が、それぞれの蔵の個性ある味わいを作り出していましたが。 昭和時代に入って転換期が訪れました。 日本醸造協会が発足し、全国の酒蔵から優れた酵母を収集・分析し、品質の高い酵母株の培養に成功。これを「協会酵母」として全国の酒蔵に提供する仕組みが整いました。 この取り組みによって、日本酒全体の品質が底上げされ、味のバラつきが大幅に改善されたといいます。 どの蔵でも安定した高品質の酒が造れるようになったことは、日本酒文化の普及・発展に大きく貢献しました。一方で、こうした流れに逆らうように、蔵付き酵母や自家培養酵母にこだわり続ける杜氏や酒蔵も存在します。 協会から酵母を購入せず、自らの手で酵母を育て、その土地にしか存在しない個性を酒に宿そうとする姿勢は、まさに発酵文化の本質を守る試みと言えるでしょう。 微生物と人間の、長い長い共同作業 納豆の起源から世界最古の酒ミード、そして現代の日本酒醸造に至るまで、発酵の歴史は人間と微生物の長い共同作業の歴史なんですよね。 目に見えない小さな菌たちが、食材を変え、飲み物を生み出し、文化を育ててきました。私たちが、その恩恵を受けられるのは、沢山のお腹が痛いという思いをを重ねながら「有益な発酵」を見極め、伝えてくれた先人たちがいたからこそです。今日あなたが手にする一杯の日本酒にも、そんな悠久の発酵の歴史が詰まっています。 もちろん私がお酒を醸せるのも先人たちが培ってきた歴史のお陰で造れているということを考えると感謝しかないですね。  
麹

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2万円で実現した自作スマート製麹システム

2026年4月25日
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麹室をIoTで管理! 「麹」それは酒造りに欠かせない重要な要素です。 この麹の良し悪しで酒の味にも変化をもたらすので酒造りは麹づくりと言っても過言ではないくらいなんです。 その品質を左右するのが麹室(こうじむろ)の温度管理ということもあり、当蔵の麹室の自作の温度管理システムを導入し、より精密な製麹環境を実現したその仕組みや導入までの経緯を詳しくご紹介します。 麹室の温度管理がなぜ重要なのか 酒造りにおいて、麹は発酵の核心を担う存在で、麹菌が米に繁殖する過程で生み出す酵素が、デンプンを糖に変え、やがてアルコール発酵へとつながっていくんですが、育てる麹室では、温度・湿度・二酸化炭素濃度が麹の出来を大きく左右します。 特に日本酒用の麹は、味噌や醤油に使う麹と比べて温度管理が格段にシビアなんです。少し目を離した隙に品温が上がりすぎてしまうと、麹菌が死滅したり雑菌が繁殖したりして、せっかくの麹がダメになってしまうことも。 酒造りに使える良質な麹を安定して作るためには、24時間体制での細やかな管理が欠かせません。 その昔、今ほど精密な温度管理が出来ない環境ということもあり、麹づくりは人海戦術で種切りから出麹まで温度管理のため頻繁に場所の移動を行って生育環境を見守る必要がありました。 市販の製麹機では対応できない現実 製麹機という麹を作るための専用機器があります。温度を一定に保つ環境とヒーターを組み合わせた比較的シンプルな仕組みで、麹室の環境を自動管理してくれるものです。 家庭用であれば数万円から存在しますが、酒造りでは100kg単位の麹が必要になることもあるため、それなりの規模の機器が必要になります。 簡易的な業務用製麹機でも約20万円、温度管理を完璧に行い、大吟醸に使用する「突きハゼ」と呼ばれる特殊な麹まで作れる高性能機になると、なんと1台400万円・・・。 突きハゼとは、麹菌の菌糸が米粒の表面だけに広がり、内部には深く入り込まない状態の麹のことで、上品でなめらかな味わいの大吟醸酒を造る際に欠かせない技術です。 高性能な製麹機はその管理まで自動化できるという点で非常に優れてはいるのですが、うちのような零細酒蔵にはとても手が出ません。 しかも当蔵は普通の民家を改装した蔵。そもそも入口から大型機械が搬入できるかも怪しいので即却下。 まずはDIYで麹室を自作 一畳ほどのスペースに木枠を組み、断熱材で囲み、FRP(繊維強化プラスチック)で防水加工を施して扉を取り付けました。 防水ならペンキでも良さそうなものですが、ペンキは乾燥する時に有機溶剤を吐き出し乾燥しますし、いつまででているかが不明なこともあり却下。 その点、FRPは醸造用のタンクにも使われていたりするので問題がないし、そもそも私はFRPを取り扱えるということで採用しました。 あと、内部に棚台を設けることで、麹室としての基本的な機能は十分に成立しますし、製作コストは近くのホームセンターで揃うので材料費だけで約1万円ほど。 内部には電気を引いてLEDライトを設置し、当初はSwitchBotを活用して温湿度・品温・CO2濃度をスマートフォンで確認しながら、手動でヒーターのON・OFFを制御する運用を試みました。 この方法には大きな問題がありました。 人が定期的に確認しなければならないため、うっかり確認が遅れると品温が上がりすぎて麹がダメになってしまうのです。 自身の製麹技術の未熟さもありましたが、温度管理の精度不足が麹の出来の悪さに直結していました。 これでは到底、酒の仕込みに使える麹は作れません。 IoTで解決!Arduino(ESP32)による自動温度管理システム その後対策として考えたのがIoT(モノのインターネット)技術です。元々マイコン制御というものに興味があったのですがコードが書けないので躊躇していましたがAIの登場で一気にハードルは下がりました。 そこで採用したのは「Arduino(アルデュイーノ)」というオープンソースのマイコンボード。 電子工作の入門機として世界中で使われており、プログラムを書き込むことでセンサーの値を読み取ったり、外部機器を制御したりすることができるスグレモノ。 同じ用途ではRaspberryPi(ラズベリーパイ)も有名ですが、近年は性能向上に伴い価格も上昇しているため、今回はAmazonで約2,000円から購入できる「ESP32」というArduino互換ボードを選択しました。 コンパクトながらWi-Fi通信機能を内蔵しており、IoTプロジェクトには最適な一枚です。センサー類も1個あたり1,000〜5,000円程度で入手でき、品温センサー・温湿度センサー・CO2センサーをそろえても総額1万円ほど。 麹室の製作費と合わせても、トータル約2万円で本格的なスマート製麹システムが完成しました。 システムの仕組み 現在の麹室管理システムは、以下のような流れで動作しています。ESP32に接続した各センサーが、品温・室内温湿度・CO2濃度を常時計測し、データをWi-Fi経由でサーバー(GoogleスプレッドシートをGoogleDriveで運用)に1分ごとに自動送信・記録しています。 蓄積されたデータはリアルタイムでパソコンで確認しており、スマートフォンからも確認できるようになっています。品温が低い状態ではヒーターが自動でONになり室温を上昇。品温が上がってきたらヒーターをこまめにON・OFFしながら最適な温度帯を維持する仕組み。 これはまさに高価な製麹機が行っている温度制御と同等の機能?かもしれません。 プログラムはC++言語で記述されていますが、コードを1行も書いたことがなかったため、Google の生成AI「Gemini」に頑張ってもらいました(笑)。現代のAIツールを活用すれば、プログラミングが出来ない私でもIoTシステムの構築が可能な時代になったのがスゴイことですね。 思えば今から40年ほど前の高校生の頃、学校でパソコン授業で、先生から円周率は桁数を増やせば増やすほど描かれる円の形が綺麗になると言われ「へぇー」という感想しか無かった時代から考えるととんでも無い進化です。 導入後の変化 このシステムを稼働させてから、麹管理の現場は大きく変わりました。夜中に品温確認のために目を覚ます必要がなくななったのが大きいです。 また、データの推移を見れば手入れのタイミングも予測できるようになり、深夜作業をほぼゼロに抑えられるようになっています。 麹の品質も安定し、日本酒仕込みに使える水準の麹を安定して製造できるようになってきました。 400万円の製麹機には到底及ばないものの、2万円という投資でここまで到達できたことは、小規模蔵にとって非常に意義のある取り組みだったと感じています。 伝統的な日本酒造りの技術と、現代のIoT・AI技術を組み合わせることで、小さな蔵でも品質向上への挑戦ができる。 そんな可能性をこのシステムが示してくれています。 今後もデータを蓄積しながら、より良い酒造りを追求していきます。  
袋吊り

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なぜ袋吊りなのか?それには理由があります。

2026年4月23日
「なぜそんな無駄な方法を?」とよく聞かれます お酒の搾り方の話をすると、ほぼ必ずこう聞かれます。「袋吊りって、儲からないんじゃないですか?」正直に言って儲かりません。それでも袋吊りを選んでいます。それには理由があります。包み隠さずお話ししましょう。 まず「圧搾」とは? 日本酒の醸造工程の最後に、醪(もろみ)からお酒を搾る作業があります。最も一般的な方法が「圧搾(あっさく)」です。醪を酒袋に詰めて機械に積み重ね、上から強い圧力をかける。じわじわと、ペッチャンコになるまで搾り切る。最終的に酒袋は板のように薄くなり、春になるとよく見る「板粕」の形になります。子供の頃母親に石油ストーブの上で板粕を焼いてもらい、砂糖をたっぷりとまぶして食べました。お酒というキーワードが大人の仲間入りをしている気分にさせてくれてなんか嬉しく思ったものです。そなな、圧搾のメリットは明快です。板粕が出来て焼いて食べると美味しい(笑)はさておき。まず、効率がいい。機械任せなので人手がかからず時間も短くて済む。次に、歩留まりが高い。醪のうち大体80%がお酒になり、残り20%が酒粕になります。搾れるだけ搾りきるので、1回の仕込みから最大限のお酒が取れます。大量生産に向いており、安定した品質管理もしやすい。大手蔵が圧搾を採用するのは、至極合理的な判断です。 では「袋吊り」とは何か 袋吊りはまったく異なるアプローチです。醪を酒袋に入れて吊るし、重力だけで自然に滴り落ちるものをお酒として集める。圧力は一切かけません。ただ吊るして、待つ。その時間、丸24時間ほどです。結果として、取れるお酒の量は醪全体の約50%程度。残り50%は酒粕です。圧搾と比べると、取れる量がほぼ半分。大きな機械は不要ですが、時間も手間もかかります。経営的な視点だけで見れば、これほど「割に合わない」搾り方はありません。事実、袋吊りを行っている酒蔵の多くは、品評会への出品用や、特別な限定品のためだけに実施しており、通常の販売酒には採用しないのが現実です。 それでも袋吊りを選ぶ、たった一つの理由 そのほうが、圧倒的に美味しいから。これに尽きます。醪の状態では、米のでんぷんがすべてお酒に変わりきっているわけではありません。完全に溶け切ったものもあれば、半分だけ溶けたもの、形がまだ残っているものも混在しています。いわば「お酒になりきれなかった成分」が共存している状態です。圧搾でぎゅっと力をかけて搾ると、本来のお酒の部分だけでなく、この「なりきれなかった成分」も一緒に絞り出されます。これが雑味の正体です。圧搾が悪いわけではありません。ただ、力をかければかけるほど、本来お酒ではなかった部分も混ざり込んでしまう。袋吊りは重力だけ。自然に落ちてくる分しか取りません。だから、素直にお酒になりたかった部分だけが、静かに滴り落ちてくる。その結果、雑味が入り込む余地がなく、まろやかで輪郭のはっきりした酒本来の味が生まれます。 大手にできて、小規模蔵にできないこと、その逆もある 大手の酒蔵は、冬の間に1年分のお酒をまとめて造ります。複数のタンクで醸造した醪を最終的にブレンドして、味のバランスを整える。これが大手の強みであり、職人技でもあります。ただ、杜氏が作ったお酒もブレンダーが一緒くたにしてしまいますので、折角のオリジナリティが無くなるという反面も。しかし、ブレンドによって、圧搾で生じた多少の雑味は、他のタンクの成分と混ざり合い、むしろ複雑な風味として中和されていきます。熟練のブレンダーが整えることで、雑味は雑味でなくなる。しかし当蔵のような小規模蔵では、1回の仕込は多くても数百リットル程度です。ブレンドしようにも、そもそも複数タンクを持つ規模がありません。雑味を風味に変えるだけの量と多様性がないのです。だとすれば、答えは一つ。最初から雑味を出さなければいい。小規模であることは制約ではなく、選択の余地でもあります。大量生産できないからこそ、時間と手間をかけた袋吊りが現実的な選択になる可能性がある。大手が絶対にできない方法を、小さな蔵だからこそ全品に採用できる。これが当蔵の逆転の発想です。 損を知ってなお選ぶことの意味 歩留まり50%。圧搾の半分しか取れない。時間はかかる。利益率は下がる。それでも袋吊りを選ぶのは、損得の話ではありません。飲んでくださる方に、本当に美味しいお酒を届けたいという、それだけです。袋吊りで搾ったお酒をはじめて飲んだとき、「これが酒本来の味か」と感じました。余計なものが何もない。雑味がない分、米の甘みと旨みがまっすぐ伝わってくる。まろやかで、でも輪郭がある。あの味を知ってしまったら、もう戻れませんでした。儲からないけれど、やめられない。そういうお酒です。当蔵の袋吊りを、ぜひ一度、味わってみてください。
米麹

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米麹とは何か?酒蔵が教える「発酵の神様」の科学と伝統

2026年4月22日
はじめに「米麹」は日本の食文化の根幹 日本酒、味噌、醤油、みりん、塩麹、甘酒など、これらはすべて「米麹(こめこうじ)」なくして生まれません。 発酵食品大国・日本の食文化を支える縁の下の力持ち、それが米麹です。 私たちは酒蔵として、毎年多くの米麹を仕込みます。 麹造りは、単なる製造工程ではなく麹菌という微生物との対話であり、古来から受け継がれてきた職人の技そのものです。 種麹が蒸されたお米の表面に着き、内部の水分をめがけて根を伸ばしながら表面に増殖していく過程で、いかに麹菌が快適に過ごせる環境を作ってあげるかを人間がサポートするのが製麹という作業といいます。 麹と糀の違い 何方もこうじ菌を表し、使われる用途に寄って使い分けられる事が多い。 ・糀は日本で生まれた和製漢字で蒸した米にこうじ菌が咲く様子が「花」のようであることから。特に「米こうじ」を指すことが多く、味噌や醤油を仕込む際のに使われる。 ・麹は中国から伝わった漢字で穀物全般のこうじを表す事が多く、主に酒造りに使われることが多い。 米麹とは?定義と基本知識 麹菌「Aspergillus oryzae」とは 米麹とは、蒸した米に麹菌(Aspergillus oryzae、アスペルギルス・オリゼー)を繁殖させたものをいいます。 麹菌はカビの一種ですが、人体に無害なだけでなく、食品の発酵・醸造において欠かせない有益菌として知られています。 また、日本固有の菌でもあり、2006年10月12日に日本醸造学会によって日本の「国菌」に認定されました。 学術的な観点からみると、Aspergillus oryzae のゲノムは2005年に解読され(産業技術総合研究所ほど)、約12,000ものタンパク質コード遺伝子を持つことがわかっています。 近縁種のコウジカビ(A. flavus)と比較しても、麹菌は有毒なアフラトキシンを生成する遺伝子がサイレンシング(不活性化)されており、安全性の高さが遺伝子レベルで確認されています(Machida et al., 2005, Nature)。 つまり、麹菌は「長い歴史の中で日本人が選び育ててきた、安全で優秀な微生物」で、日本以外の環境では自然に存在しません。 米麹が生み出す「酵素の力」酒蔵が最も重視する機能 酒蔵にとって、米麹の最大の価値は酵素の宝庫であることです。 麹菌は菌糸を伸ばしながら、多種多様な加水分解酵素を分泌します。 アミラーゼ=でんぷんを糖に変える。 アミラーゼはでんぷん(多糖類)をグルコース(ブドウ糖)やマルトース(麦芽糖)に分解する酵素で、日本酒の醸造において、この反応は「並行複発酵(へいこうふくはっこう)」と呼ばれる世界でも類を見ない発酵プロセスを可能にします。 ビールは麦のでんぷんを糖化してから発酵させる逐次発酵といいます。 ワインはもともと糖が豊富なブドウを発酵させます。 日本酒は、麹による米のでんぷんの糖化と酵母によるアルコール発酵が同時進行します。 この並行複発酵こそが、日本酒が20度近い高アルコール濃度に達しながら、複雑で繊細な風味を持つ理由の一つです。 プロテアーゼ=タンパク質をアミノ酸に変える プロテアーゼはタンパク質をアミノ酸に分解する酵素です。 日本酒の「旨み」の核心となるグルタミン酸などのアミノ酸は、このプロテアーゼの働きによって生み出されます。 酒蔵では「麹の力(こうじのちから)」という言葉をよく使いますが、これはまさにこれらの酵素活性の強さを指しています。 麹の力が強すぎれば酒が甘くなりすぎ、弱すぎれば発酵が進まない。麹師(こうじし)は数十年の経験と勘で、その絶妙なバランスを見極めます。 リパーゼ・セルラーゼなど 他にも麹菌は脂質を分解するリパーゼ、セルロースを分解するセルラーゼなど多種の酵素を産生します。 これらが複合的に作用することで、発酵食品の多様な風味と栄養価が生まれます。 麹造りの工程 酒蔵の職人仕事 製麹の工程 ① 原料米の選定と精米 良い麹は良い米から始まります。 山田錦や五百万石などの酒造好適米は、心白(しんぱく)と呼ばれるでんぷん質が豊富な中心部を持ち、麹菌が繁殖しやすい特性があります。 精米歩合によって麹の仕上がりも変わるため、この工程は非常に重要です。 ② 洗米・浸漬・蒸し 精米した米を洗い、適切な時間水に浸漬(しんせき)させた後、蒸し器(甑・こしき)で蒸し上げます。 蒸し米は外硬内軟(がいこうないなん)外側は硬く、内側は柔らかい状態が理想です。 これにより麹菌が内部に菌糸を伸ばしやすくなります。 ③ 種麹(たねこうじ)の散布 蒸し米を適温(約35〜40℃)に冷ました後、種麹(麹菌の胞子を担体に付着させたもの)を均一に振りかけます。 現在、種麹は「もやし屋」と呼ばれる専門業者が製造・販売しており、その歴史は室町時代にさかのぼります。 ④ 麹室での管理 職人の本領発揮 温度と湿度が厳密に管理された麹室(35〜40℃、湿度90%程度)で、約48時間かけて菌糸を繁殖させます。 この間、蔵人は数時間ごとに米を手でほぐす「手入れ(てをいれる)」を行い、温度の均一化と菌糸の伸長をコントロールします。 深夜2時、3時に起きて麹室に入ることも、これが酒造りの現実です。 良い麹を作るためには、文字通り「寝ずの番」が必要な場面もあり、蔵人の手はいつも温かく、米の甘い香りがしみついています。 麹菌の生育温度は菌糸伸長の最適温度が約30〜35℃、胞子形成の最適温度が約25〜30℃とされており、昔の杜氏はこれを経験則で把握しながら作業しましたが、当蔵ではIoTでデータを管理しながら最適なタイミングで手入れや室内の温度を管理しています。 米麹の健康・栄養機能 科学が証明する発酵の恵み 近年、米麹は健康食品としても注目されています。 ビタミン・必須アミノ酸の生成 麹菌の代謝によって、ビタミンB群(B1、B2、B6、ナイアシンなど)が生成されます。 また、プロテアーゼによって生成されるアミノ酸の中には、必須アミノ酸も含まれており、栄養的な価値も高まります。 機能性ペプチドの存在 麹由来の発酵食品には、血圧降下作用を持つACE阻害ペプチドが含まれることが報告されています(Itou & Akahane, 2004 ほか)。 塩麹や甘酒が健康食品として注目される背景には、こうした科学的根拠があります。 参照元:消費者庁 機能性表示食品の届出後における分析実施状況より 腸内環境への影響 麹発酵食品に含まれる麹菌由来の多糖類やペプチドは、腸内細菌叢(腸内フローラ)の改善に寄与する可能性が示唆されています。 近年の腸内マイクロバイオーム研究の進展とともに、発酵食品の機能性への注目度はさらに高まっています。 米麹の種類と用途 酒蔵目線で解説 麹菌の株(ひずみ)や培養条件によって、麹の性質は大きく変わります。 黄麹(きこうじ)日本酒・味噌・醤油の主役 最も広く使われる麹です。 クエン酸の生成量が少ないため、日本酒の醸造では酸度が低く、繊細でフルーティーな酒質になります。 白麹(しろこうじ)・黒麹(くろこうじ)焼酎の個性になる 沖縄・九州地方で焼酎醸造に使われてきた麹。 クエン酸を大量に生成するため、雑菌汚染を防ぐ効果があります。 黒麹(Aspergillus luchuensis)は泡盛の伝統的な麹で、白麹はその突然変異株として発見されました。 近年、白麹を日本酒醸造に応用する取り組みも増えており、従来の黄麹とは異なるシャープな酸味を持つ「白麹仕込み日本酒」が話題になっていたりもします。 酒蔵から見た「麹造りの未来」 伝統的な手作業による麹造りは、今後もその価値を失うことはないと思います。 しかし同時に、科学技術の進歩が麹研究に新たな可能性もあります。 麹菌のゲノム情報を活用した機能性向上の研究や、当蔵でも各種センサーで品温や湿度などを管理していますが、大手ではAI・センサー技術を活用した麹室の自動管理システムの開発など、伝統と革新の融合が進んでいます。 私たちが大切にしているのは、科学を知った上で、手を使うということです。 温度センサーやデータロガーが示す数値は信頼しますが、最終的には麹の香りを嗅ぎ、手で触れ、色を見て判断する。 それが酒蔵の杜氏の仕事なんです。 まとめ、米麹は「生きた文化財」 米麹は単なる発酵の道具ではありません。 日本の気候風土の中で何百年もかけて育まれ、職人の手から手へと受け継がれてきた「生きた文化財」だと思います。 麹菌 Aspergillus oryzae は日本の「国菌」であり、安全性と機能性がゲノムレベルで証明されています。 アミラーゼ・プロテアーゼをはじめとする豊富な酵素群が、発酵食品の味・香り・栄養を生み出し、並行複発酵という世界唯一の醸造技術を支えるのが米麹です。 麹造りは温度・湿度・時間の管理と、職人の五感が融合した精緻な技術であり健康機能性の面でも、科学的研究が急速に進んでいます。 酒蔵にとって、麹は「仕込みの始まり」であり「酒の命」です。 次に日本酒や味噌を手にするとき、その背後にある麹師たちの仕事と、目に見えない微生物の営みに、少し思いを馳せていただければ幸いです。
コップ酒

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「清酒」と「その他の醸造酒」は何が違うのか? 酒造カテゴリーで理解する日本のお酒の区分

2026年4月21日
日本酒・どぶろく・濁り酒、似ているようで全く違うんですよね。 酒税法が定める2つのカテゴリーの違いを、製法・原料・出荷要件から丁寧に解説します。 1. 「清酒」と「その他の醸造酒」酒税法上の区分とは 日本では、お酒の製造・販売は酒税法によって厳格に規定されています、無免許での販売製造は法律違反になりますのでご注意ください。 同法は酒類を大きく「発泡性酒類」「醸造酒類」「蒸留酒類」「混成酒類」の4種に分類し、醸造酒類のなかにさらに「清酒」「合成清酒」「果実酒」「その他の醸造酒」などが並んでいます。 一般に「日本酒」と呼ばれるものの多くは酒税法上の「清酒」に該当します。 そのほか、いわゆる「どぶろく」や特定の発酵飲料は「その他の醸造酒」として区分されることがあります。 この2つのカテゴリーは、一見すると似たような製法をたどりながらも、酒税法が求める要件において根本的に違うんです。 その差異は「濾過義務」「添加物規制」「原料の範囲」という3つの軸に集約されます。 酒税法 第3条(抜粋・要旨) 清酒とは、米・米麹・水を原料として発酵させ、濾過したものであって、アルコール分が22度未満のものをいう(糖類・有機酸等の添加は一定条件下で可)。 参照元:国税庁 法令解釈 第3条 その他の用語の定義より ここで注目すべきは「濾過した」という一文です。 清酒として出荷するためには、醪(もろみ)を必ず濾過しなければならない。 これが「その他の醸造酒」との出発点となる違いです。 2. 最大の違い ①:醪(もろみ)を濾す義務があるかどうか 清酒製造において、米・米麹・水を仕込んで発酵させた段階のものを醪(もろみ)といいます。 この醪をそのままの状態が「どぶろく(濁醪)」です。 ちなみに、その他の醸造酒ではもろみの状態のものを濾すことが出来ないのですが、時間が経って上澄みと沈殿物に分かれた状態で、上澄みだけをすくい取るだけでも濾したとみなされます。 清酒 濾過が必須条件 酒税法上、醪を濾過しなければ「清酒」として製造・出荷できない。濾過によって米の固形分(酒粕)と液体(清酒)に分けることが法定要件。どぶろく状態での出荷は清酒の免許では不可。 その他の醸造酒 濾過しないまま出荷可能 「その他の醸造酒」の免許であれば、醪を濾過せずにどぶろく・濁り状態のまま製品として出荷できる。近年の「どぶろく特区」制度もこのカテゴリーを活用している。 この規定が実務に与える影響は大きく、たとえば農家民宿や地域の小規模事業者が「どぶろく特区」制度を活用してお酒を製造・販売する場合、多くは「その他の醸造酒」の製造免許を取得しています。 清酒の免許では、醪を濾過して清澄な状態にしなければ出荷できないというのもありますが、決定的なのは清酒、焼酎、味醂を製造する酒造免許は新規で受け付けていないためというのもあります。 また、この違いは製品の外観にも直結します。 濾過を経た清酒は基本的に透明〜淡黄色の液体になりますが、その他の醸造酒のどぶろくは白濁した状態のまま販売されます。 近年人気の「にごり酒」は清酒カテゴリーに属しますが、これは一度濾過したあとに意図的に少量の澱(おり)を戻すか、粗めの濾過布を使って固形分を微量残す形をとっており、「濾過した」という要件を満たしています。 3. 最大の違い ②:発酵途中の添加物に関する規制 清酒とその他の醸造酒を分けるもう一つの重要な軸が、発酵途中に投入できる原料・添加物の範囲です。 清酒 仕込み中の添加物は厳しく制限 発酵中(仕込み工程)に添加できるのは酒税法が列挙した品目に限られる。米・米麹・水を基本とし、清酒かす・醸造アルコール・糖類・有機酸・アミノ酸等は一定条件下でのみ可。農産物など「列挙外」の素材を発酵途中に入れることは原則不可。 その他の醸造酒 発酵途中の添加に比較的自由度 その他の醸造酒は「米・麹・水以外」の素材——たとえば果物・野菜・ハーブ・乳製品など——を発酵途中に加えた製品を製造できる。これにより日本酒ベースでありながら独自風味を持つクラフト系発酵飲料が生まれやすい。 清酒では、仕込みに使用できる原料を酒税法が正面から規定しているため、たとえばゆずや梅を発酵中のもろみに直接投入して一緒に発酵させることは「清酒」の製造免許の枠内では認められません(完成した清酒にあとから果汁を加えた場合、カテゴリーがリキュールになり別の免許区分が必要になります)。 一方、その他の醸造酒のカテゴリーでは、こうした「変わり種の素材」を発酵プロセスに組み込むことが可能なケースがあり、近年のクラフト系発酵飲料ブームで注目されています。 たとえば米と麹を基本にしながら、発酵途中で果物を加えたフルーツどぶろくなどがその例です。 4. 最大の違い ③:使用できる原料の範囲 清酒は原則として「米・米麹・水」が主原料です。 酒税法に定める清酒の定義には「米、米麹及び水を原料として発酵させ、濾過したもの」という文言があり、これが清酒たる最低条件を規定しています。アルコールや糖類の添加は法定要件を満たせば認められますが、あくまで「清酒」という枠内に収まる形に限られます。 ポイント:清酒の原料規定(概要) 清酒の原料として認められる主なもの:米・米麹・水・清酒かす・醸造アルコール(アルコール分36度未満)・糖類・有機酸・アミノ酸塩・水あめ・着色料など、酒税法施行令が定める品目に限定される。 参照元:「清酒の製法品質表示基準」の概要より これに対して「その他の醸造酒」は、その名のとおり清酒・合成清酒・果実酒・ビール等の各定義に当てはまらない醸造酒を広く受け止めるカテゴリーです。 使えるのは穀物と糖類を主原料とし、副原料にそれ以外のモノを使うことを許されていてハーブやホップを使った製品などもあります。 5. 具体的な事例で比較する 事例①:どぶろく特区と農家の直売所 2003年に始まった「構造改革特区」制度により、特定の地域では農家や農家民宿などが小規模にどぶろくを製造・販売できるようになりました。 このどぶろくは「その他の醸造酒」として製造免許を取得したもので、特区という関係上どぶろくしか造れないという規制もありますが。 地域おこしや農泊促進のなかで広がっており、現在全国に特区が存在し、大阪では高槻市にあります。 事例②:にごり酒は清酒か、その他の醸造酒か 市販されている「にごり酒」の多くは清酒に分類されます。 これは「荒濾し(あらこし)」と呼ばれる粗めの布で醪を一度通すことで、法律上「濾過した」という要件を満たしているためです。 見た目は白濁していますが、酒税法上は濾過済みの清酒です。 一方、濾過を一切行わないどぶろくはその他の醸造酒になります。 事例③:米と果物を一緒に発酵させたクラフトサケ 近年、米と麹を基本にしながらも発酵途中でハーブや果物を加えたクラフト系発酵飲料が登場しています。 これらは清酒の原料規定の範囲外の素材を発酵プロセスに用いているため、「その他の醸造酒」として製造されることが多く、ラベルにも「その他の醸造酒」と記載されます。 事例④:純米酒と本醸造酒 「純米酒」は米・米麹・水のみで造られる清酒であり、醸造アルコールの添加を行いません。 「本醸造酒」は醸造アルコールを少量添加した清酒で、どちらも酒税法上は「清酒」です。 いずれも醪を濾過する工程を経ており、どぶろくとは異なる完全別カテゴリーでどぶろくを純米酒と呼ぶこともできません。 当蔵では純米造りとよんでいます。 6. 一覧表:清酒 vs その他の醸造酒 比較項目 清酒 その他の醸造酒(どぶろく等) 醪の濾過 必須(法定要件) 不要。濾さずに出荷可能 主原料 米・米麹・水が基本 米・麹・水以外の素材も使用可 発酵途中の添加 法定品目のみ(厳格な列挙) 比較的自由度が高い 外観 透明〜淡黄色(にごり酒は例外的に白濁) 白濁・不透明が多い 代表例 純米酒・吟醸酒・本醸造酒・にごり酒 どぶろく・クラフト発酵飲料 酒税法上の根拠 第3条第7号(清酒の定義) 第3条第19号(その他の醸造酒の定義) 免許区分 清酒製造業免許 その他の醸造酒製造業免許 7. まとめ:2つのカテゴリーが示す意味 「清酒」と「その他の醸造酒」は、いずれも米と麹と水を使った発酵飲料という共通点を持ちながら、酒税法が定める要件においてはっきりと異なります。 清酒は「濾過すること」「原料は法定品目に限ること」という2本の縛りを持ち、それが伝統的な清酒品質を守る制度的な裏付けとなっています。 一方、その他の醸造酒はその縛りから解放されたカテゴリーであり、どぶろく特区の農家や新しいクラフト発酵飲料をつくるメーカーにとってはより柔軟な製造免許の選択肢になっています。 清酒は醪を必ず濾過しなければならず、どぶろくのまま出荷は不可 その他の醸造酒は醪を濾さずそのまま出荷でき、どぶろく特区はこの免許を活用 清酒の仕込みに使える原料・添加物は酒税法の列挙に限定される その他の醸造酒は発酵途中に米・麹・水以外の素材を加える自由度がある 市販の「にごり酒」は荒濾しを経た清酒であり、どぶろくとは法律上の別物 純米酒・本醸造酒・吟醸酒はいずれも「清酒」に分類される 日本酒を選ぶとき、ラベルに「清酒」と書いてあるか「その他の醸造酒」と書いてあるかを確認するだけで、その製品がどのような制度的枠組みのなかで造られたのかが見えてきます。 お酒の背景にある法律の仕組みを知ることは、日本酒をより深く楽しむ入口になるかもしれませんね。
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日本酒発酵の科学:麹・酵母・乳酸菌が織りなす精密な醸造プロセス

2026年4月20日
日本酒って単純な「お酒」ではないんですよ。 まず、白米というデンプン質の基質から出発し、複数の微生物が役割を分担しながら段階的に変換を行う世界でも類を見ない複合発酵飲料なんです。 その発酵プロセスを、微生物学・生化学の視点から紐解いてみたいと思います。 1. 製麹工程:酵素産生のプラットフォームの構築 日本酒造りの第一の鍵は麹菌(Aspergillus oryzae)による製麹工程にあります。 外硬内軟(外側が固くて中側が柔らかい状態)の蒸米に麹菌の胞子を散布するところから始まり、種麹が散布された蒸米は温度・湿度を精密に管理した麹室(こうじむろ)で約48時間程度培養していきます。この間、麹菌は菌糸を米粒内部へと伸長させながら、多種多様な加水分解酵素を分泌しています。 特に重要なのがアミラーゼ(α-アミラーゼおよびグルコアミラーゼ)とプロテアーゼの産生です。α-アミラーゼはデンプンの α-1,4-グリコシド結合をエンド型に加水分解してデキストリンを生成し、グルコアミラーゼはその末端からグルコースを逐次的に遊離させる。この二段階の糖化反応により、酵母が資化可能な単糖が供給される。プロテアーゼはタンパク質をアミノ酸・ペプチドへと分解し、後工程における酵母の窒素源として機能するとともに、酒の旨味成分の前駆体にもなる。 専門用語を並べていますが、要するに、麹菌がデンプンの塊である米を分解して糖分に変化させて、次の工程の酵母が二酸化炭素とアルコールに分解しやすいようにしてくれいているということです。 2. 酒母(しゅぼ):微生物叢の精選と酵母の増殖 次に、製麹で得られた麹と蒸米・水・酵母を小さなタンクに仕込み、「酒母」(もと)と呼ばれる高密度酵母培養液を育成していきます。 伝統的な生酛(きもと)・山廃酛(やまはいもと)では野生の乳酸菌(Lactobacillus 属等)を自然に増殖させますが、現代の酒造りでは殆ど行われていません。その代わり、現代主流の速醸酛(そくじょうもと)では、生酛や山廃元のように乳酸菌を増殖させるのではなく醸造用乳酸を直接添加しています。 乳酸菌によるホモ乳酸発酵(C₆H₁₂O₆ → 2CH₃CH(OH)COOH)は醪(もろみ)のpHを急速に低下させる。このpH低下は選択圧として機能し、酸性条件に弱い雑菌を排除しながら、耐酸性を持つ醸造酵母(Saccharomyces cerevisiae)の増殖を優位に立たせる。この段階で酵母は対数増殖期に入り、後工程のもろみ発酵に備えて細胞密度を高めていく。 醪が酸性化することで、醸造に悪影響を与える雑菌が入っても酸性度が高い状態では行きていくことが出来ず死滅してしまうのを目的としています。 そんな中、酵母は酸性に強いため他の雑菌とともに死滅することはなく仕事ができているのです。 3. もろみ発酵:並行複発酵という世界的にも稀な発酵様式 日本酒最大の特徴が、この並行複発酵(concurrent saccharification and fermentation)にあります。 ビールのように糖化・発酵を分離せず、麹による糖化と酵母によるアルコール発酵が同一タンク内で同時進行する。 これは世界中の醸造飲料の中でも極めて稀な発酵様式なんですよね。 麹米・掛米・水を「初添・仲添・留添」の三段階(三段仕込み)に分けて段階的に投入するのは、酵母菌体密度に対する基質濃度を適正範囲に保ち、オスモティックストレスによる酵母活性の低下を防ぐためででもあるんです。 また、この操作は低温・長時間発酵(約20〜30日)と組み合わせることで、香気成分(酢酸イソアミル・カプロン酸エチル等)の生成を促進し、複雑な風味プロファイルを形成します。 アルコール発酵の中心反応は解糖系(エムデン-マイヤーホフ-パルナス経路)を経たエタノール生成の:C₆H₁₂O₆ → 2C₂H₅OH + 2CO₂。。 発酵末期のアルコール濃度は14〜20%に達し、これは酵母自身によるアルコール耐性の上限に近い値なんですよね。 結局最後は、酵母の力で二酸化炭素とアルコールに発酵という形で変化しましたが、そのアルコール濃度が高くなるに連れ酵母も死滅していくんです。 4. 上槽と火入れ:発酵の終止と品質の安定化 もろみが熟成すると「上槽」(じょうそう)と呼ばれる固液分離工程を経て清酒と酒粕に分けられ、透明なお酒になります。 その後、多くの場合火入れ(低温殺菌)を行います。 幾ら酒粕と分離しても、まだ生きている酵母はいるので、60〜65℃での短時間加熱処理を行い、残存する野生酵母・乳酸菌の失活と、酵素活性(特に残存アミラーゼ)の不活化させます。 こういったパスツーリゼーション(低温殺菌法)の概念が日本で独自発展した技術として、西洋のパスツール(ブドウからワインが造られる原理を解明した人の名前から)よりも約300年先行するとされています。 日本酒の発酵は、微生物学・酵素化学・食品工学が交錯する精緻な生物学的プロセス。 麹菌、乳酸菌、酵母それぞれが異なる時空間的ニッチを占めながら連携することで、あの透き通った一杯が生まれるんですよね。 世界中で飲まれるお酒ですが、清酒の製法は日本独自のものというお話でした。
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「希米(きまま)」という名前が出来た経緯

2026年4月19日
ブランド「希米(きまま)」はどうして生まれたのか。縁起物の定番ワード、易経の「地天泰」、仏教用語の「有頂天」、そして陶芸家・川喜田半泥子の号「其飯」多くの候補を経てたどり着いた、地元農家の希少米への感謝と「そのまま」の美味しさを届けたい想いが込められたブランド名の誕生秘話をご覧ください。
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本格的に酒造を始める

2026年4月14日
酒造りを始める準備ができた 免許があればすぐに酒造りが出来ると思っていたが、意外と免許後の準備が大変。 酒造というのは米を蒸して麹と水と混ぜて酵母を入れるだけで出来上がるが、それ以外の作業というか仕事が膨大にある。   免許が来たあとにしかできない事 レシピを税務署に申告する。 ラベルデザインの申請 施設の什器を登録する 醸造中の分析をする薬剤の発注 酵母の発注 etc ウチみたいな新規の酒蔵だと、許可されたレシピがゼロなので全て申請していかないといけないし、免許がないと買えない酵母のようなものもある。 そんなものの準備をしていたら2か月も経ってしまった。 Windowsしか使えない 酒造や酒販に関する申請や申告にはe-Taxというネットでの登録が必須で、紙での申告は嫌がられる。 紙での申請だと、申請書を郵送で専用の窓口に送ってそこでPDF化されお酒の担当のところに届けられる仕組みなので、1週間位かかるらしいが、e-Taxだと申請したらすぐにみられるのでお酒の担当官からe-Taxを勧めれれた、と言うかお願いされた。 では、e-Taxとやらを使ってみるかと調べていくと、ネットのものもあるが、お酒の事を申請するにはソフトをインストールするものしかできないことが判る。 しかも、マイナンバーカードを使ってカードリーダーで読み込ませて本人確認する仕組みだが、マイナンバーも持っていないのでどうしようかと考えたら、会社の登記情報が載った書類を準備すれば対応可能とのこと。 ただ、27か月で8000円くらいの費用もかかる。 マイナンバーカードを作っても時間がかかるしその間何も出来ないので、諦めて費用を払って会社の情報が掲載された書類を申請した。 コレで申請できると思うが、もう一つ落とし穴が・・・私のパソコンはMACなのでその時点でアウト。 しょうがないので嫁さんが使っているパソコンを借りてe-Taxをインストールしてアカウントを作り、最低限の申請だけ済ませた。 酒造は申請だけでなく、販売実績などを毎月申告しないといけない。 そのたびに嫁さんにパソコンを借りるのも厳しいので諦めて中古のウインドウズのノートでも買おうかと見たが、5年くらい前のモノが数万円で売られている。 取り敢えずWIN11はインストールされているみたいだが、まともの動くのか?すぐに壊れるのではという不安もある。 かと言って新品は10万円以上するしスペックの低いものは動きが遅すぎて使い物にならない。 MINI‐PCというのを見つけた デスクトップ型のパソコンでモニターもキーボードもマウスも無いものだが、コレをMACから遠隔操作で使うことが出来れば、モニターもキーボードもマウス不要でMACから操作できるという代物、私の使い勝手にぴったりマッチしている。 しかもお値段3万円程度と格安。スペックも申し分なくするルルと動く。 普段はMACで、e-Taxを使いたいときだけコノMINI‐PCを起動し申請を行う。 設定時のみモニターやキーボードが必要だが、モニターはテレビを使い、その他はMACに変える前に使っていたキーボードなどを使って行った。 コレでやっと醸造家としてのスタートが切れる 2か月という期間はあっという間だった。 免許が取れたことに浮かれていたのと、やることが一杯過ぎて中途半端であったりうっかり見落としていたこともあり、時間が経過してしまった。 何はともあれ、杉本酒造りスタートします。  
居酒屋でビールで乾杯

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どぶろくと合う料理と青魚の驚きのペアリング例10選

2026年3月23日
食通たちの間でささやかれている究極の組み合わせが「どぶろく×青魚(あおざかな)」です。鯖(さば)や鰯(いわし)、秋刀魚(さんま)といった脂ののった魚と、濁り酒であるどぶろく。一見意外に思えるこの組み合わせには、実は科学的・文化的な裏付けがあります。